ひときわ大きな声を出したジョットさんは、ゆっくりスマホを耳から離して、私に背中を向けたまま立ちすくむ。




《ジョットさん、お願い…!》


《…》




 Yシャツの背中をギュッとにぎりしめてお願いすると、ジョットさんは小さな声を落とした。




《ボスに、言われたからだ…だから、教えてやる》


「!」




 目を見開いてYシャツをにぎった手をゆるめれば、ジョットさんはしずかに振り返って、顔をそむけながら私にスマホを差し出す。

 明るく点灯(てんとう)した画面には、メールアドレスが一行だけ書かれていた。




《ジョットさん…!ありがとうございますっ!》




 ほおのゆるみが止まらない。

 涙の引いた目で画面を見つめ、一文字一文字まちがえないようにジョットさんのメールアドレスを自分のスマホに打ちこむと、私はスマホを抱きしめた。

 やった~~…っ!ジョットさんとメールができる!