《きみ…イタリア語がわかるのか?》


《あ…はい。えぇと…ドラマみたいな会話ですね?》




 生でそんな会話が聞けると思わなかったから、ちょっとテンションが上がって、笑いながらイタリア語で答えたのが、もしかしたらよくなかったのかも。

 私に問いかけたメガネの人も、イタリア人さんも、その瞬間目の色を変えて私を近くの車に押しこんだから。

 どうやら私は、フィクションじゃない、裏社会に住まう方々の完全にアウトな取り引き現場に、居合わせちゃったみたい。


 それからは、《この女、どうする?》とか、《始末するのにいい場所がある》とか、ドラマで聞いたことのある怖い会話を聞きながら車にゆられ。

 この廃工場で、鉄骨の柱にくくりつけられて、1人、ずっと放置されていた。




――ブブ、ブブ