ジョットさんは私と目を合わせると、ピストルを下ろすことなくそう言った。
私は小さくうなずいて、いつのまにか私を見ていたおじいさんに顔を向ける。
「えぇと…あなたがこの組の組長さんか、と聞いています…」
「ふむ…嬢ちゃんが通訳か。そうだ」
深くうなずいたおじいさんからジョットさんに視線を移して《そうみたいです》と伝えると、今度は中川さんの声が和室に落ちた。
「オヤジ、この男が…」
「おめぇら、いつから耳が遠くなったんだ?そのお嬢さんを離せ」
「…はい」
おじいさんがピシャッと言えば、中川さんは眉間にシワを寄せつつもうなずく。
その直後、パッと強めにつかまれていた腕が解放されたのを感じて、私はおそるおそる周囲のヤクザさんたちを見まわした。
おじいさんふくめ、だれも私の行動を止める人はいなさそう…。



