だから私も一緒にホテルの駐車場を探して、外国人さんが約束の相手と無事に合流するところまで見届けたんだ。

 お相手はメガネをかけたスーツ姿の、理知的な大人の人だった。

 外国人さんとスーツの人にお礼を言われて、手を振りながら さよならをしたあと。




《一般人を取り引き現場まで連れて来るとは。もうすこし慎重(しんちょう)に行動してもらいたいものですね》


《どうせこれっきりの相手だ。それより、これが話したクスリだ。イタリアで あっというまに街を汚し、中毒者を雪崩(なだれ)のように増やした》




 背後から聞こえてきたのは、イタリア語でのやりとり。

 学校ではなぜか“残念な子”と言われがちな私だけど、勉強は けっこう得意なほうで、英語やイタリア語が話せるほか、フランス語を勉強中。

 だから、その怪しげな会話もばっちり理解できて、思わず『え?』と振り返ってしまった。