ジョットさんに返事をする前にコワモテの人から声をかけられて、これ幸いと一歩前に出ながらジョットさんに顔を向けた。




《中に入っていいそうです。客間に案内してくれるって言ってます》


《ナミ…!》


《私、役に立ちますよね》




 ニコ、と笑いかければ、ジョットさんは眉根を寄せて私の前に出る。




《…俺から離れるな》




 私に目を向けることもなく、歩きながら声量を落として言ったジョットさんの言葉に、心臓がはねた。

 やっぱりジョットさん、好き…っ!


 大きな背中に見惚(みほ)れながら、ぽわ~っと歩いているうちに、いつのまにかお屋敷のなかの客間に通されていたようで。

 くつ下の裏から伝わるたたみの感触と、「ここで待ってろ」というコワモテさんの声でハッと意識を取りもどす。