《おい。…はぁ、ナビくらい俺も使える》




 ジョットさんは私に背中を向けなおして、トン、と目的地までのルートを表示させる。

 背のびをして、チラッと青い線がどこに伸びているか確認し、もう使われていなさそうな工場や倉庫がならぶ近隣(きんりん)を見まわすと、ジョットさんが歩き出した。




《あ、ジョットさん!そっちは逆ですよ》


《…》




 スマホを見ながら歩いているはずなのに、ジョットさんは止まることなく反対方向へ進んでいた。

 もしかして…方向音痴(おんち)なのかな?

 離れてしまった背中にかけ寄ると、ジョットさんから小さな声が聞こえる。




《…たのむ》


《はい?》


《…近くまで、案内を…たのむ》




 感情を押し殺したような、(へい)たんな低い声で言われた内容を理解して、私はパァッと笑みを浮かべた。




《はいっ!》