胸がドキドキと音を立てるのを聞きながら、前のめりになってジョットさんの顔を見つめる。
ジョットさんは両手を胸の高さに上げてたじろぐように一歩下がり、無言でしばし私と見つめ合った。
《…。あ、いや、女はこんなことに首を突っこむものじゃない。早く家に帰れ》
《あっ。待ってください!》
困惑からハッと抜け出したように、ジョットさんは眉根を寄せながら目を伏せて、私にくるりと背中を向ける。
廃工場の出入口へと早足で歩き出したジョットさんに、私は小走りでついていった。
《私も一緒に行きます、ジョットさん!》
《ダメだ、帰れ》
ジョットさんは太陽の下に出ると、ズボンのポケットからスマホを取り出し、数回タップしたあと耳に当てる。



