《あー…ここで、見たことは》
こまったように眉根を寄せながら、ジョットさんは言葉に合わせて手を広げたり、自分の目を指さしたりする。
最後に、人差し指をくすんだ赤い唇の前に立てながら、《言うな》と口にした。
はっ…!
《あ、わかります、イタリア語!大丈夫です》
ずっとだまってたから、言葉が通じないと思われたんだ。
あわててイタリア語で答えると、ジョットさんはすこし目を丸くして、胸に手を当てながら、ホッとしたように息を吐き出す。
え…かわいい?もしかしてこのお兄さん、かわいい?
《…ここにいた理由は知らないが、無事に帰してやるから、ここで見たことも聞いたことも、墓まで持って行け》



