ふっと、鉄骨にしばりつけられていた腕がロープの食いこみから解放され、()めつけられていた足も解放される感触がした。

 ポカンと目を開けて棒立(ぼうだ)ちになっていると、お兄さんが私の前にもどってきて、後頭部で固く結ばれた、私の口をふさぐ布に手をかける。

 ふわりと香るシトラスの匂いに気を取られているあいだに、頭のうしろでゴソゴソとお兄さんの手が動き、目の前に開いた胸元と のど仏がせまった。




《ここで、聞いたこともだ》




 拘束(こうそく)をすべて解いて、一歩うしろに下がったお兄さんに見つめられ、私の胸はドキ、と音を立てる。

 するどい つり目もよく見れば、明るい茶色の瞳がきれい…。

 なにも言えないまま見惚(みほ)れていると、ジョットさんは眉をひそめて首をかしげ、ハッとしたように目を開く。