背中に当たる硬い感触。手足に食いこむロープ。
空調もなく、ムワッとした暑さに包まれて、こめかみに汗が伝った。
窓から差しこむ真昼間の陽光に照らされて、目の前に無数のほこりがただよっているのが見える。
大変なことに、なっちゃったな~…。
ふつうの高校2年生だったはずの私、朝生穂波は今、郊外の廃工場に、たぶん、監禁されている。
「んんんー!んんんんー?(どなたかー!いませんかー?)」
何回目かの声かけをしてみたけど、口元までしばられたこの状態じゃ、鼻にかかったうめき声しか出ない。
ため息が鼻から抜けていくのを感じながら、私はあちこちサビたり、ゴミが落ちたり、荒れきっている無人の廃工場を見まわした。
どうしてこんなことになったのか。
そのきっかけはやっぱり、あのイタリアの人に声をかけられたことかなぁ。



