【京都・九条家へ向かうテスラ車内】
夜の闇を切り裂き
テスラが京都の市街地を疾走する
目的地である九条家は
もうすぐそこだった
夜:「……少し、遅くなったな」
市内に入る途中
予期せぬ渋滞に巻き込まれたのだ
その焦りが
夜の言葉に滲む
その時
夜は、自分の顔の肌に
ピリピリとした
静電気のような違和感を覚えた
彼女は、そっと自分の頬を撫でる
夜:「……健太」
夜:「あんた、何か感じない?」
健太:「え……?」
健太:「言われてみれば……なんだか、少し息苦しい、ような…」
霊圧だ
だが、まだ九条家までは距離がある
やがて
住宅街の向こうに
九条家の、あのモダンな建物が見えてきた
その瞬間
夜は、目を見開いた
夜:「……異常だぞ、健太」
夜:「こんなに遠くから霊圧を感じるなんて」
健太は
その言葉の意味を
身をもって理解した
空気が鉛に変わる
ハンドルを握る彼の額に
玉のような汗が浮かび
呼吸が、荒くなっていく
車が、九条家の前に着いた
その、瞬間
健太:「ぐっ……!」
健太は短い呻き声を上げると
白目を剥き
ハンドルに額を打ち付けて
意識を失った
後部座席のファルコンドアが
翼のように、上へと開く
夜が、外に降り立った
ズキン!
全身に
強力な電流を流されたかのような
激しい痛みが走る
だが
彼女の体を覆う
日(アキラ)の黒いローブが
その霊圧のほとんどを吸収していた
夜:(それでも、この状態か……)
夜:(……とんでもない霊圧だな)
夜は、気を失った健太を一瞥すると
家の庭へと続く、門の方を睨みつけた
仁と、家族の気配は、まだかろうじて感じる
夜は、歯を食いしばり
その痛みに耐えながら
呪いの中心地である
九条家の庭へと
一人、走り出した



