第一章:17年目の『ぽ、ぽ、ぽ…』
日本中が
一つの怪談に震えていた
始まりはSNSだった
『白いワンピースを着た背の高い女につけられた』
『ぽぽぽという奇妙な声が聞こえる』
最初は誰もが
よくある都市伝説の模倣だと笑っていた
だが目撃談は日に日に増え続け
やがて行方不明になる子供が出始めた
全国各地で同時に
テレビはこの現代の神隠しを連日報じていた
【夜探偵事務所・昼下がり】
健太:「というわけで今月の家賃もギリギリです所長」
健太が経費の計算書を前に頭を抱えている
夜は彼の嘆きをBGMに
ソファで優雅にタバコをふかしていた
事務所のテレビから八尺様特集が流れている
夜:「馬鹿馬鹿しい。集団ヒステリーよ」
彼女はそう吐き捨てたが
その瞳は真剣だった
テレビ画面に不気味なBGMと共に
【緊急特集:令和の神隠し『八尺様』の正体に迫る】
というテロップが映り再現VTRが始まった
【再現VTR】
ナレーター:『最初に異変に気づいたのは小学三年生のA君でした』
VTRはありふれた地方都市の夕暮れの通学路を映す
ランドセルを背負った少年が一人歩いている
ナレーター:『学校の帰り道A君は奇妙な音を耳にします』
少年の背後
遠くの電信柱の影から甲高い奇妙な音が聞こえる
『ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ……』
少年が気味悪がって振り返る
だがそこには誰もいない
気のせいかと思い再び歩き出す
だが音は今度はもっと近くで聞こえた
『ぽ……ぽ、ぽぽ……』
少年は駆け出した
家の玄関に飛び込み乱暴にドアを閉める
ナレーター:『その夜A君は高熱を出しました。そしてうなされながらこう言ったといいます』
少年:「……しろい、ひとが……」
少年:「すごく、おおきい、おんなのひとが……みてた……」
ナレーター:『そして二日後の夜。事件は起きました』
夜中少年はふと目を覚ます
窓の外からあの声が聞こえたからだ
『ぽ、ぽ、ぽ、ぽ……』
少年がカーテンの隙間から外を覗くと
それ、がいた
街灯の青白い光の下
天に届くかと思うほど背の高い
白いワンピースを着た女
深い帽子でその顔は分からない
ただその異様な姿でじっと
自分の部屋の窓を見上げていた
少年は声にならない悲鳴を上げベッドに潜り込む
ナレーター:『翌朝。A君はベッドから姿を消していました。部屋の窓には鍵がかかったままでした……』
V-TRは少年の空っぽになったベッドを映し終わった
【夜探偵事務所】
健太:「17年前に流行った話そのままですね」
健太は少しだけ青い顔で言った
夜:「くだらないわね。恐怖を煽るだけの三流ホラー」
だが彼女の目は笑っていなかった
夜は誰に言うでもなく静かに呟いた
夜:「声と姿だけで対象に影響を与える精神干渉」
夜:「鍵のかかった窓を無視して攫う空間転移」
夜:「気に入った子供にしか認識させない高度な結界…」
健太:「え?」
夜:「ただの都市伝説じゃないわね」
夜:「深淵の者……それもかなり厄介な覚醒者クラスよ」
その時だった
事務所の古びたドアが
遠慮がちにコンコンとノックされた
夜はテレビの電源をリモコンで切ると
静かに言った
夜:「……来たわね」
日本中が
一つの怪談に震えていた
始まりはSNSだった
『白いワンピースを着た背の高い女につけられた』
『ぽぽぽという奇妙な声が聞こえる』
最初は誰もが
よくある都市伝説の模倣だと笑っていた
だが目撃談は日に日に増え続け
やがて行方不明になる子供が出始めた
全国各地で同時に
テレビはこの現代の神隠しを連日報じていた
【夜探偵事務所・昼下がり】
健太:「というわけで今月の家賃もギリギリです所長」
健太が経費の計算書を前に頭を抱えている
夜は彼の嘆きをBGMに
ソファで優雅にタバコをふかしていた
事務所のテレビから八尺様特集が流れている
夜:「馬鹿馬鹿しい。集団ヒステリーよ」
彼女はそう吐き捨てたが
その瞳は真剣だった
テレビ画面に不気味なBGMと共に
【緊急特集:令和の神隠し『八尺様』の正体に迫る】
というテロップが映り再現VTRが始まった
【再現VTR】
ナレーター:『最初に異変に気づいたのは小学三年生のA君でした』
VTRはありふれた地方都市の夕暮れの通学路を映す
ランドセルを背負った少年が一人歩いている
ナレーター:『学校の帰り道A君は奇妙な音を耳にします』
少年の背後
遠くの電信柱の影から甲高い奇妙な音が聞こえる
『ぽ、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ……』
少年が気味悪がって振り返る
だがそこには誰もいない
気のせいかと思い再び歩き出す
だが音は今度はもっと近くで聞こえた
『ぽ……ぽ、ぽぽ……』
少年は駆け出した
家の玄関に飛び込み乱暴にドアを閉める
ナレーター:『その夜A君は高熱を出しました。そしてうなされながらこう言ったといいます』
少年:「……しろい、ひとが……」
少年:「すごく、おおきい、おんなのひとが……みてた……」
ナレーター:『そして二日後の夜。事件は起きました』
夜中少年はふと目を覚ます
窓の外からあの声が聞こえたからだ
『ぽ、ぽ、ぽ、ぽ……』
少年がカーテンの隙間から外を覗くと
それ、がいた
街灯の青白い光の下
天に届くかと思うほど背の高い
白いワンピースを着た女
深い帽子でその顔は分からない
ただその異様な姿でじっと
自分の部屋の窓を見上げていた
少年は声にならない悲鳴を上げベッドに潜り込む
ナレーター:『翌朝。A君はベッドから姿を消していました。部屋の窓には鍵がかかったままでした……』
V-TRは少年の空っぽになったベッドを映し終わった
【夜探偵事務所】
健太:「17年前に流行った話そのままですね」
健太は少しだけ青い顔で言った
夜:「くだらないわね。恐怖を煽るだけの三流ホラー」
だが彼女の目は笑っていなかった
夜は誰に言うでもなく静かに呟いた
夜:「声と姿だけで対象に影響を与える精神干渉」
夜:「鍵のかかった窓を無視して攫う空間転移」
夜:「気に入った子供にしか認識させない高度な結界…」
健太:「え?」
夜:「ただの都市伝説じゃないわね」
夜:「深淵の者……それもかなり厄介な覚醒者クラスよ」
その時だった
事務所の古びたドアが
遠慮がちにコンコンとノックされた
夜はテレビの電源をリモコンで切ると
静かに言った
夜:「……来たわね」



