「今日は宿題ないのか?」


「あ。あるよ!」




 問いかけられた彩姫(さき)は気を持ちなおすように口角を上げ、タッタッとリビングを出て自室に入る。

 制服からゆるいシルエットのルームウェアに着替え、教科書・ノート・ペンケースを小わきに(かか)えてリビングにもどった。

 変わらずソファーに寝転がっている王賀(おうが)とローテーブルのあいだに座った彩姫は、教科書とノートをテーブルに広げて、うしろに顔を向ける。




「王賀くんの宿題は?」


「学校で終わらせた」


「そっか、相変わらずだね」




 目を閉じている王賀にニコッと笑顔を向けたあと、彩姫は顔の向きをもどして「よし」と宿題に取りかかった。

 これが平日における、彩姫と王賀の日常である。