「王子さまのとなりに立つのは、お(ひめ)さまだろ。彩姫はかわいいお姫さまでいればいいんだよ」




 王賀は二ッと、挑発的(ちょうはつてき)に目を細めながら笑う。




「“かっこいい王子さま”の座は、ゆずらないから」


「…っ!」




 彩姫の瞳は、大きく見開かれた。

 バクッ、バクッと体の内から外までひびかんとする、はげしい鼓動(こどう)に、彩姫の体温は上がる一方だ。

 そんな状態に彩姫を追いやった王賀は、口角を上げたまま目を閉じて、ため息混じりにこぼす。




「どんどんナナメに走って行くから、俺の婚約者としての自覚がないのかと思った」


「そ、そんなことないよ!私は昔から王賀くんが大好きだもんっ」




 あわてて言い返した彩姫に視線を向け、王賀はやわらかい笑みを浮かべた。




「そ。俺も彩姫が大好き」


「!」


「彩姫がちゃんと俺を結婚相手として見てるなら…もう、キスしてもいいな?」


「…え?」