「王賀くんみたいなかっこいい王子さまになって、王賀くんのとなりに立てる人になりたいんだ」


「…」




 しおらしく真意を明かした彩姫を見つめ、王賀はおどろきに全身を支配されたように、ポカンとしたまま しばらく固まった。

 彩姫と王賀は、長いあいだ おたがいの真意を知らずに、すれちがっていたのだ。




「…ふはっ。そんなこと考えてたのかよ」




 おどろきから抜け出した王賀は、くしゃっと表情をくずして笑う。

 王賀の笑い声を聞いた彩姫は、目を丸くしながら顔を上げた。




「お、王賀くん…?」


「俺に見合う子になりたくて、彩姫は王子になろうとしてたの?」




 王賀はテーブルに ほおづえをつきながら、もう何年も見せることのなかった、やさしいほほえみを浮かべる。

 彩姫は ほおを赤くして、「う、うん」とコクコクうなずいた。