ポカンと目を見開いて、彩姫は小さな声をもらす。
数秒固まったあと、いきおいよく顔を上げた彩姫の目には、“想い人を振り向かせたい”と必死になるあまり、眉根を寄せている王賀の姿が映った。
彩姫は目を丸くしたまま、王賀の誤解を解くために口を開く。
「お、“お兄ちゃん”だなんて、思っていないよ。昔から、王賀くんは私のかっこいい王子さまだ」
そこまで言っておどろきから抜け出した彩姫は、前のめりになって、ほおを赤く染めながらまっすぐに王賀を見つめた。
「私は王賀くんと手をつないだり、キスをしたり、私たちの子どもを育てたりしたい。…でも、泣き虫の私じゃ、王賀くんに似合わないから…」
しゃべりながら、いきおいと視線を落とした彩姫は、またうつむく。



