「そ、それは昔の話で…が、学校のみんなだって、よくかっこいいって言ってくれるんだよ!」


「俺にはかっこよく見えないね」


「っ…王賀くんは、イジワルだ…」




 瞳をうるませた彩姫は、唇を固く閉じてうつむく。

 幼少期、王賀という“王子さま”を間近で見てきた彩姫の夢は、王賀のように、“かっこいい王子さま”になることだった。

 はた目から見れば、その夢はもう叶っている、と言えなくもない。


 しかし彩姫にとっては、王賀に認められることが、夢の達成に必要なゴールだった。

 王賀は一度カトラリーを置いて、うつむいている彩姫を見つめる。




「王子さまごっこ、もうやめろよ。彩姫には絶対似合(にあ)わない」


「…っ、いやだ…」


「なんで」