顔を上げれば、いつもやさしい笑顔を浮かべて、彩姫をまっすぐ見つめてくれていた王賀は、彩姫にとって、絵本から飛び出した王子さまのようだった。

 それが、成長するにつれてひねくれていったのは…まぁ、彼なりの理由があるようだが。

 ときはもどり現在、彩姫はあこがれの“王子さま”を見つめて、ワクワクと目をかがやかせる。




「…彩姫は、“かっこいい王子さま”にはなれないよ」




 その期待に反して、目を()せながら冷たく落とされた言葉に、彩姫は目を大きく見開いた。




「ど、どうして!?」


「だって、彩姫は泣き虫だろ」




 ツンとしたようすで、王賀はナイフとフォークを動かし、料理を口に運ぶ。

 彩姫はすこし前のめりになって、目を合わせない王賀を見つめた。