幼いころ、彩姫(さき)は今のようすとはちがって、大変繊細(せんさい)な女の子だった。

 王賀(おうが)は、よく涙を流す1歳年下の婚約者に、いつもやさしいほほえみを向け、手を差し伸べていた。




『そっか…それはさみしいね。それならさきちゃん、明日は ぼくのおうちに来ない?』


『おうがくんの、おうちに…?』


『うん。ぼくといっしょにいれば、さみしくないよ。お父さまとお母さまが帰ってくるまで、ぼくといっぱいあそぼう』


『…!うんっ。さき、おうがくんと いっしょにいる!』




 かがやきをおおい隠すくもから顔を出した太陽のように、キラキラした顔に変わった彩姫が胸に飛びこむと、王賀は彩姫をギュッと抱きとめる。




『さきちゃんのなみだは、ぜんぶぼくが晴らしてあげる。さきちゃんが いつもかわいい えがおでいられるように…ぼくはさきちゃんと、ずっといっしょにいるよ』