クールに言葉を返した王賀に対して、彩姫はニッコリとした笑顔を向ける。

 それから、うれしそうにまたべつの料理を口に運ぶ彩姫を見て、王賀はため息混じりに笑った。




「そーゆーとこはかわいいのに…」




 ボソッとつぶやかれたその言葉は、彩姫の耳には届かなかったよう。




「うん?なにか言った?」


「べつに」


「そっか…」




 顔を上げて首をかしげた彩姫は、王賀が澄ました顔でもくもくと夕飯を食べるようすをしばし ながめる。

 そして、気を取りなおしたように、笑顔で「ねぇ、王賀くん」と話しかけた。




「ん?」


「私もそろそろ、王賀くんみたいなかっこいい王子さまになれたかな?」


「…」




 王賀は目の前の料理に落としていた視線を上げて、しずかに彩姫を見つめる。


 こう見えて、幼き日の王賀は、彩姫にとってあこがれの存在だった。




『ひっく…ふえぇぇん…っ』


『さきちゃん。今日はどうして ないているの?さきちゃんを かなしませているものの正体を、ぼくに教えて』


『おうが、くん…おとーさまとおかーさまがね、明日、おうちにいないんだって…』