「わっ!」




 彩姫はビクリと肩をふるわせて、廊下(ろうか)につながる扉があるほうへ、いきおいよく顔を向けた。

 そこに立つ王賀は、いつのまにかラフな部屋着姿に変わっている。




「王賀くん、いつのまに夕飯の支度を…!私もやるって言っているのに!」




 ムッと眉をひそめて唇をすこしとがらせる彩姫に、王賀はヘラリと笑って答えた。




「彩姫の宿題が終わるのを待ってたら、遅くなるだろ」


「声をかけてくれたら、残りは寝る前にまわしたのに」


「それで、わからない問題があったら寝るまぎわの俺をたたき起こしに来るのか?」


「う…王賀くんはイジワルだ」




 彩姫はプクッとほおをふくらませて不満をあらわにする。

 おなじ学校の乙女(おとめ)たちが見ればおどろきに目を見開くその子どもっぽいようすも、幼いころから彩姫を知っている王賀にとっては見なれたもの。