ここは花もはじらう可憐(かれん)乙女(おとめ)が、日々送迎(そうげい)の車に乗って通う高等学校。

 いわゆる、お(じょう)さま学校のひとつ。




「あ…」




 掃除(そうじ)の行き届いた教室の床に、シャープペンシルが転がり落ちると。

 すくっと立ち上がった細身の女子が、床にひざまずいてシャープペンシルを拾い上げる。




「どうぞ、お嬢さん」


「あ、ありがとうございます、若王子(わかおうじ)さま…っ」


「どういたしまして。気をつけてね」




 トイレの手洗い場に立って、かがみを見つめながら結った髪に手をそえる女子あれば。




「いやだ、髪がほつれてる…」


「私にまかせて。結びなおしてあげる」


「わ、若王子さま!?あ、ありがとうございます…っ」




 振り向いて目を見開く彼女に美しくほほえみかけ、細い指でシュシュを外して髪をすく。