「あの…それはどういう意味でしょうか…？というか、そんなこと可能なのでしょうか…？
妊娠期間は長いですし、体型も変わりますし…、生まれた子どもの外見にも特徴が出るでしょうし…」

あまりにも常識外れの提案（というか命令）をされて、湧きまくる疑問をとりあえずデルバートにぶつけてみた。

「それは問題ない。シェリーナが妊娠して体型が変わる頃から、君には別邸に引きこもってもらう。
妊娠期間中体調が思わしくなく、公爵夫人としての仕事はできないことにすればいい」

「はぁ…」

軽く言ってくれるけど、それって数ヶ月間は監禁状態ってことよね…。
結婚初夜から無理難題を次々と命令してきて、この人鬼なのかな？
デルバートの今までの態度から、愛溢れる結婚生活はなさそうだと思っていたけれど、あまりの事態にげんなりしてしまう。

「でも…生まれた子どもの外見が、私にもデルバート様にも似ていなかったら、さすがに周囲に騒がれるのではないでしょうか…？」

「それも問題ない。君とシェリーナは髪色も目の色も酷似している。顔つきや体型は違うが、その辺が親と似ない子どもは珍しくない」

（あ、なるほど）

私は納得してしまった。
カリアナ家は侯爵だが、数ある侯爵家の中では下位の方に位置する。
一方、アーデン家といえばこの国の中でも公爵家のトップオブトップだ。
莫大な軍事力を持ち第一線で国を守るなくてはならない存在で、国王の次に権力を持つのはアーデン家当主と言われるほどの名門。
名門公爵家次期当主の妻として、なぜ私が選ばれたのかずっと疑問だったんだけど、その理由がわかっていろいろと腑に落ちた。
デルバートはシェリーナと似ていることを第一条件で選んだのだ。
うちは下位とはいえ一応侯爵家なので、公爵夫人としてギリオッケー。
トントン拍子でこの縁談が進んだのは、シェリーナに似た侯爵令嬢が私以外にいなかったからだろう。
銀髪の貴族は意外といるけれど、それに加えて深紫の瞳を求めると、一気に選択肢が狭まる…というか私くらいかもしれない。