別邸に来て3ヶ月が経過した。
「悪阻が重くて辛い」と言っていたシェリーナだが、ほぼ毎日私に嫌味と皮肉を言うことを欠かさない。
そして、定期的にデルバートを引っ張ってきて、2人で私を非難する。
ときどき「わーーーー!!!」と叫びながら言い返したい衝動に駆られるけど、実践したら事態は悪化するだけだから、必死で耐えた。
妹の反抗期のお陰で罵声に耐性があると思っていたけれど、正直、メンタルが病みそう。

それでも、シェリーナが安定期に入れば少しは気持ちも安定するかもしれないと淡い期待を抱いていた。
幸い妊娠の経過は順調で、シェリーナのお腹の中で赤ちゃんはすくすく育っているらしい。
きっと、体調が安定すれば、少しは穏やかになってくれるだろう…。

ところが、淡い期待は見事に打ち砕かれた。
安定期に入り、体調も改善したシェリーナの行動は、益々活発になっていった。
私が屋敷の仕事をするのが気に食わないのか、仕事中に長々と滞在して私におもてなしをさせ、仕事の邪魔をし始めたのだ。
今日もあえて仕事部屋に来たシェリーナは、侍女頭であるエミリーにお茶の用意をするよう命じた。

「あなたの仕事は公爵家に仕えることでしょう?
今、私のお腹には公爵様の赤ちゃんがいるのよ。何よりも私を優先すべきじゃなくて?」

唯一のオアシスだった仕事の時間まで邪魔されて、我慢の限界値ギリギリだった私は、ついにシェリーナに意見してしまった。

「エミリーは屋敷付けで、報告のために別邸に来ています。おもてなしは他の侍女に命じていますので、お待ちいただけますか?」