「どういう気持ちでアーデン家を名乗っているのかしら。
デルバートに愛されているのは私だし、アーデン家の跡取りを生むのも私だというのに」

おっと…いきなり何言い出すんだ？
思わずキョロキョロと周囲を見てしまったけど、誰一人驚いていない。
そりゃそうか…別邸にいる使用人は全員事情を詳しく理解しているんだから…。

「あなたにはわからないでしょうけど、妊娠すると悪阻がとてもつらいの。
お腹が空いても食べても気持ち悪くて、ときには立っていられないほど気分が悪くなるのよ。
あなたはいいわね。のんきに食事を楽しめて。本当にいいご身分だわ」

なんて返したらいいのかわからず、また、この話を聞かなければならないのかもわからず、私はとりあえず椅子に座った。

「妊娠していないあなたが座る必要ある！？」

この人は私が何をしてもイライラするみたい。
どうしろっていうのよ…。

「もっと私を敬いなさいよっ！
そもそも、あなたが公爵家に来れたのは、私の髪と瞳の色のおかげなのよ！
あなたなんて、私と似た要素がなければデルバートに選ばれるはずないんだから！」

どんどんエスカレートするシェリーナ。
周りは何も口出ししてこない。
もしかしたら、デルバートがシェリーナの好きにさせるように使用人たちに命じているのかもしれない。
これ、私も付き合わなければいけないのかな…。