それから１週間後、予定胃通り私は別邸に引きこもり始めた。
正直ホッとした…。
だって、未経験の悪阻妊婦を演じるのがとてもつらかったから…。
演技から解放されて、ようやくのんびりできるぞ。

ところが、別邸の生活はのんびりとは程遠いものだった。
それは、別邸生活１日目の夕食を食堂で食べていたときのこと。

「いけません。おやめください…」

「何を言っているの？ご挨拶しないと無礼でしょう？」

騒がしい声がする方向に顔を向けると、２人の女性がやってきた。

「初めまして。アリステラ様」

私の横に立ち突然挨拶を始めた女性がシェリーナだとすぐわかった。
なぜなら、髪と瞳の色が私と同じだったから。
でも、似ているのはそれだけ。
シェリーナは私と違って小柄で華奢な体型で童顔、とても１歳上とは思えない外見をしていた。
妊娠中だからか、少しゆったりとしたクリームイエローのドレスを着ている。
にしても…、食事中に押しかけるなんて、礼儀を知らない人だなぁ…。
もう一人の女性は、シェリーナの後ろに立ってオロオロしていた。彼女の侍女かな？

「私、シェリーナ・ロゼスと申します」

シェリーナはドレスの裾を持ち上げ、可愛らしくお辞儀をした。
ここまでされたら、私も挨拶を返さないわけにはいかない。
面倒だなぁと思いつつ、席を立って私も挨拶をした。

「初めまして。アリステラ・アーデンです」

しかし、何か癇に障ったようだ。
愛らしい笑顔がたちまち曇る。