「航大くん、この光の色、もうちょっと宇宙っぽくならないかな?」
「宇宙っぽく……? なるほど、ではこの青と紫の光を混ぜてみましょう」
タイムワープ装置の完成まで、あとわずか。
放課後、私は航大と生徒会室にこもり、最後の調整を続けていた。
航大の顔には、もう過去の失敗に怯える臆病な影はなかった。私の空想的な発想を、彼は完璧な計画力で現実のものにしようと、真剣な表情で向き合っている。
(よかった……航大くん、もう一人で悩んでないんだ)
私は、そんな彼の姿を愛おしく見つめていた。
「優菜さん、これでどうかな?」
航大がレバーを引くと、装置からは、キラキラと輝く光が発せられた。それは、まるで本物の宇宙のように、美しく、神秘的だった。
「すごい……! 航大くん、完璧だよ!」
私は、航大に抱きつくようにしてそう言った。
「え、優菜さん……?」
航大は、驚いた顔で私を見つめる。
(あ……やばい、調子に乗りすぎた……!)
私は慌てて航大から離れようとしたが、航大は私の肩をしっかりと掴んだ。
「優菜さん……君は、僕に勇気をくれた。君の空想的な発想は、僕の心を救ってくれたんだ」
航大は、そう言って、私に優しく微笑んだ。
その笑顔は、いつもの完璧な笑顔ではなく、心の底から笑っている、本物の笑顔だった。
「航大くん……」
「僕の過去を、不器用な僕の全てを受け入れてくれて、本当にありがとう。僕……君のことが好きだ」
航大の言葉に、私の胸は高鳴った。
(……え? 今、航大くん、なんて言った? 夢じゃないよね?)
私は、航大の言葉を信じられないまま、彼の顔を見つめた。
「優菜さん……僕の告白は、無自覚なままではいられない。だから、ちゃんと聞いてほしい」
航大はそう言うと、私の手を握り、もう一度言った。
「桜井優菜さん、君のことが好きです」
私の目からは、自然と涙が溢れ出した。
「私も……私も、航大くんのことが、ずっと好きでした……!」
私は、そう言って、航大に再び抱きついた。
その瞬間、タイムワープ装置から、まばゆい光が放たれた。
「優菜さん!?」
「航大くん!?」
二人の声が、光の中に吸い込まれていく。
そして、次に私たちが目を開けると、そこは満天の星空が広がる、誰もいない校庭だった。
「ここ……どこ?」
「タイムワープ装置が、本当に作動してしまったみたいだ……」
航大は、困ったように微笑んだ。
私たちは、二人きりの夜空の下で、手を繋ぎ、星を見上げていた。
「航大くん……」
「優菜さん……」
私たちの両片想いは、不器用なまま、奇跡を起こした。
そして、この奇跡は、私たちの運命を変える、最高の贈り物になった。
翌朝、私たちは校庭で眠りこけているところを、生徒会メンバーに見つかり、大目玉を食らうことになったのは、また別の話だ。
でも、私たちはもう、一人ではなかった。



