雨がなかなか降りやまない中で俺はぼんやりとしている。
この雨の中、かっこ付けたがりなバイク野郎が行ったり来たりしているのが見える。
どうやらマフラーを外してるらしくやたらめったらエンジンの音がうるさい。 (あんなのはバイク野郎でも何でもないな。 ただの馬鹿じゃないか。)
 茂之は改造なんてしなかったな。 というより改造バイクを見付けると本気で怒鳴りつけたもんだ。
「あんたよ、そんなことして楽しいか?」 「何だよ、偉そうに。』
「それって改造だろう?」 「だからどうした?」
「あんたみたいなやつにバイクに乗る資格は無いよ。」
「は? 資格なら持ってるけど。」
「お前はバイクに乗る柄じゃねえって言ってんだよ。 分かんねえのか?」
「ああ、分かんねえ分かんねえ。 どっか行けよ。 邪魔だぜ。」
「お前が邪魔なんだよ。」 「何だと? この野郎!」
 年上でも喧嘩は構わないって言ってたな。 「やつらが間違ってるんだ。 うっせえ連中だよ。」
そう言いながらいつも茂之はバイクを磨いていた。 「これは俺の命だ。」ってね。

 2年の夏だったかな、、、卒業生の一人が事故で死んだんだ。 俺たちとは擦れ違いだったから直接会ったことは無いんだけどさ。
茂之は珍しく「葬式に行ってくる。」って俺に言ってきた。 「誰の葬式?」
 「俺たちと入れ違いで卒業した羽山謙子さんって人。」 「誰それ?」
「知らないけどさあ、水泳部で泳いでたんだって。」
 柵は嫌いなんだけどちょっとでも繋がりが有ると動くんだな。 俺は感心した。
(俺だったらそこまではやらないな。) 関りが無かったんだもん。
その後でやつはバイクを飛ばして港までドライブしたんだって。 何だったんだよ?

 クラクションを鳴らすやつが居る。 「誰だろう?」
電話ボックスの中から顔を出すと吉永巧の親父さんだった。
 「乗って行かないか?」 誘ってくれたけど俺は手を振った。
茂之の写真を持ってることを知って親父さんもそのまま行ってしまった。 今、何時なんだろう?
 気付いたらもう4時を過ぎていた。 「そろそろ行くかな。」
俺はまたバス停に立った。