第八章:エピローグ


翌朝
滝沢は静かに目を覚ました
隣では璃夏が
まだすうすうと穏やかな寝息を立てている
ベッドの下からは
まるでゴジラのような
地響きにも似たいびきが聞こえてくる
昨夜ソファで力尽きたイヴァンだ
滝沢は
二人を起こさないよう
音もなくベッドを抜け出した
服を着てアジトを出ると
彼はそのまま三階の組長の部屋へ向かう
坂上:「滝沢さん、こんなに朝早くどうしたんですか?」
滝沢:「昨夜は世話になったな」
坂上:「いやいや、仁義を通しただけですよ」
坂上:「それでも、まだまだ通しきれません。それくらい、あなたには義理が残ってます」
滝沢:「そんなこと気にするな」
坂上:「そういう訳にはいかないです」
滝沢:「俺もここにタダで住まわせてもらってるんだ」
坂上:「それは親父との約束ですから…」
滝沢:「……そうだったな」
滝沢:「一応、礼だけは言っておきたかった」
坂上:「また何かあればいつでも言ってください」
滝沢:「お互いな」
滝沢は自分のアジトへ戻る
そして
いつものルーティン
朝のニュース番組をつけた
『―――昨夜未明、大田区の令和島にて、海外のテロリスト集団と、日本の過激派組織による大規模な銃撃戦があった模様です。警視庁は、両組織の背後関係や、逃走した者たちの行方を捜査している、とのことです……』
女子アナが
どこか他人事のように
昨夜の死闘の「公式見解」を語っている
滝沢は
そのニュースを静かに見ながら
一本の煙草に
火をつけた
窓から差し込む朝の光が
その煙を
穏やかに照らしていた