【夜探偵事務所・社用車車内】
夜の令和島は
巨大なクレーンとコンテナの墓場だった
夜:「何なのここ?」
夜:「田上健太!ほんとに合ってるの?」
健太:「一応もうここが令和島なんですけど……」
健太:「海岸沿いに走れば行き着くかなって…」
夜:「ん?」
夜の目が闇の先にある
黒い影を捉えた
不自然なほど黒いヘリのシルエット
そして停泊している貨物船から
武装した兵士たちが次々と降りてきている
夜:「行け!このまままっすぐ!」
夜はフロントガラスの先を指差す
健太:「はい!」
海岸沿いを車が疾走する
健太:「いっぱい兵士が降りてきてますよ!」
夜:「行け」
健太:「え?」
夜:「あの兵士の群れに突っ込め」
健太:「え?」
健太:「えぇー!」
健太が躊躇したその時
夜はセンターコンソールを乗り越え
健太の足の上からアクセルを床まで踏みつけた
健太:「ちょ!夜さん!」
健太:「轢いちゃう!轢いちゃうって!」
夜:「轢くんだよ!」
ドカドカドカッ!
車は猛スピードで兵士の群れに突っ込み
次々と屈強な男たちをなぎ倒していく
【滝沢の視点】
貨物船から降りてくる兵士は
100人か
いやもっといる
絶望的な数の差
そこに
背後から地響きのような絶叫が聞こえた
イヴァン:「タキィィィィィーーーーー!」
滝沢が振り返る
暗くて顔はよく見えない
だが巨大な男が一人
こちらに向かって走ってくる
兵士たちが大群となって押し寄せてくる
その時だった
ブォォォォン!
激しいエンジン音
左側から一台の車が猛スピードで兵士の群れに突っ込み
何人もの男たちを宙に跳ね飛ばしていく
兵士たちがその暴走車に怯んだ瞬間
どこからか乾いた銃声が響き
兵士たちが悲鳴を上げて倒れていく
狙撃だ
滝沢:「……さすがに情報量が多すぎるだろ」
思わず滝沢は突っ込んだ
やがて暴走してきた車が止まり
夜が降りてくる
夜:「そのまま向こうの方に行ってて」
夜:「邪魔だから」
凛とした声で夜は健太に告げた
健太:「はい…」
健太は悲しそうな顔で
フロントがボコボコになった車を走らせ
戦場から離脱していく
兵士たちが夜に襲いかかる
だがその拳もナイフも
彼女の体に触れる寸前で見えない壁に阻まれる
逆に夜は
兵士の鼻に掌底を叩き込み
寸勁を打ち込み
回し蹴りを放ち
次々と屈強な男たちを倒していく
他の兵士が銃を乱射する
だが弾丸は夜に当たる寸前で
ぐちゃりと潰れて地面に落ちた
兵士たち:「なんだコイツは!?」
ロシア語の絶叫が響き渡る
その銃弾の嵐の中
璃夏の狙撃が正確に兵士たちの頭を撃ち抜いていく
そして
キーッという甲高いブレーキ音と共に
何台もの黒いセダンが滝沢の背後に集結した
ドアが開き
関東誠友会の幹部たちがドスや銃を手に降りてくる
小里:「戦争だ!」
小里:「あの兵士どもをやっちまえ!」
「「「おおおおおぉぉぉっ!!」」」
ロシア軍の兵士たちに
日本のヤクザたちが銃を乱射し襲いかかった
滝沢:「……どうなってやがる?」
その混乱の極みの中
あの巨大な男が滝沢の元へたどり着いた
イヴァン:「タキィー!」
イヴァン:「無事か?タキ!」
滝沢:「お、お前……」
滝沢:「イヴァンか!」
イヴァン:「サプライズだよ、タキ!」
滝沢:「はぁ?」



