【夜探偵事務所】

夜:「田上健太ぁぁぁー!」
健太:「はいぃぃ!」
健太:「録音データの翻訳が少し難しくて!」
半泣きの健太をよそに
夜はデスクで指をトントンと鳴らしながら
静かにタバコをふかしていた
健太:「あ!出来そうです!」
翻訳された日本語が
ノートパソコンの画面に表示される
健太:「出来ました!」
夜は椅子から飛び起きソファに急ぐ
そして健太からノートパソコンをひったくり
かぶりつくように画面を見た
『お前は誰だ?』
『覚えはないが何の用だ?』
『……なんだと…!?』
『今更お前たちと関わるつもりは無い』
『……場所は?』
『令和島?』
『わかった』
夜:「……相手の声は聞こえないわけね」
夜:「この滝沢の会話を聞く限り……」
夜はスマートフォンを取り出し璃夏に電話をかける
璃夏:『もしもし』
夜:「璃夏さん、あの音声データを翻訳したんだけど…」
璃夏:『私もさっきイヴァンさんに聞いてもらって彼から聞きました』
夜:「なるほど!」
夜:「相手はロシア軍で間違いないわね」
夜:「私たちも令和島に向かう」
夜:「軍相手だと何も出来ないかもだけど…」
璃夏:『私たちも今から向かいます!』
夜は電話を切った
【滝沢のアジト】
電話を切る璃夏
彼女は会話型翻訳アプリに切り替えた
璃夏:「行きましょう!イヴァンさん」
イヴァン:「ああ!行こう!」
璃夏とイヴァンがアジトの扉を開け
地下からの階段を駆け上がる
関東誠友会のビル入口で
慌てて出てきた二人は
組事務所に戻ってきた小里とぶつかりそうになった
小里:「どうしたんすか!?璃夏さん」
璃夏:「あ、小里さん!」
璃夏:「今、滝沢さんがすごく危ない状況で!」
小里:「えぇ!?」
小里:「あの滝沢さんが?」
璃夏:「一刻を争うの!」
小里:「場所はどこッスか!?」
璃夏:「令和島っていう島?埋め立て地!」
璃夏:「ごめんなさい、行ってきます!」
璃夏はそう言うとビルから飛び出し
イヴァンと車に乗り込み走り去った
残された小里は
ダッシュで組事務所に入ると
三階の組長室へと駆け上がった
小里:「組長!」
彼はノックもそこそこに扉を開ける
デスクに座っていた坂上 誠が顔を上げた
関東誠友会、現組長
坂上:「なんだ?騒々しい」
小里:「今、璃夏さんから聞きました!」
小里:「滝沢さんがヤバい状況らしいです!」
坂上:「何だと!?」
坂上:「場所は!?」
小里:「令和島っていう島か埋め立て地らしいです!」
坂上:「わかった!」
坂上はデスクの上の内線電話を掴んだ
坂上:「今から行ける直系組員を全員集結させろ!」
坂上:「令和島に向かわせる!」
そして彼は小里に向き直る
坂上:「お前は今ここに居る幹部を全員連れて先に行け!」
小里:「わかりました!」
小里は組長室を飛び出す
一階の事務所で幹部たちに向かって叫んだ
小里:「滝沢さんが今危険な状況らしい!」
小里:「行くぞ!先代との仁義を通すぞ!」
「「「おおおおおぉぉぉっ!!」」」
男たちの雄叫びが
ビル全体を揺るがした