【夜探偵事務所】

夜は呆れたように
そしてどこか楽しそうに天を仰いだ
夜:「しかしイノシシみたいな男だな」
イヴァンという男の
後先を考えない友情と暴走っぷりに
夜は思わず笑ってしまった
璃夏:「あの……今すぐって言っても
どれくらいで日本に着くんでしょうか?」
璃夏の顔には
期待と不安が入り混じっていた
健太:「ちょっと調べてみます」
健太がノートパソコンを操作し
フライト情報を検索し始める
健太:「通常だとウラジオストクからなら
フライト時間は2時間くらいですね」
璃夏:「にに2時間!?」
あまりの速さに璃夏は絶句する
心の準備が全く追いつかない
夜はそんな璃夏の反応を見て
またクスクスと笑っている
健太:「ですが例のロシアとウクライナの問題で
現在は日本への直行便はないみたいです」
夜:「その場合どれくらいかかるの?」
健太:「中国か韓国経由になりますね」
健太:「上手くいっても8時間くらいはかかるみたいです」
璃夏:「8時間後……。それでも早いですけど
2時間よりは良かった……」
璃夏は苦笑いを浮かべた
その時
健太のノートパソコンにピコンと通知が来た
Telegramだ
イヴァン:『直行便が今は無いみたいだ』
イヴァン:『すぐにタキに会えると思ったのに残念だ…(しょんぼりした犬の絵文字)』
そのあまりに素直で子供っぽいメッセージに
三人は思わず吹き出してしまった
璃夏:「ふふっ……。あとは私がイヴァンさんとやり取りしても大丈夫ですか?」
夜:「OK!」
璃夏:「どこの空港に来るのかも分からないですし
聞かないと……」
璃夏がそう言い終わる前に
パソコンにまたイヴァンからメッセージが届く
イヴァン:『日本のどの空港に行けばいいんだ?』
そのあまりの無計画さに
今度こそ三人は声を上げて爆笑した
このどうしようもなく真っ直ぐで
愛すべき親友の来日が
物語を誰も予想できない方向へと
加速させていくことになる