【回想 ― 15年前・冬の東京湾埠頭】

冬の東京湾から吹き付ける風は
刃物のように冷たかった
貨物船から降り立った俺は
巨大なコンテナが作る鉄の迷路の中を
音もなく進む
埠頭の薄暗い照明の中
黒いスーツを着た二人の男が道を塞いだ
俺は構わずその間を進む
その奥
別のロシア人とヤクザたちが
麻薬の取り引きをしていた
脇に停められた二台の車のマフラーから白い湯気が上がっている
スーツの男:「聞いてんのか!」
怒声と共に男が俺の胸ぐらを掴んだ
俺はその手首を掴み
肘を捻り上げる
男の体が宙を舞い
派手に地面に叩きつけられた
もう一人が内ポケットから銃を抜く
その瞬間
俺はその銃を奪い取り男の太ももを撃ち抜いた
パンッ!
乾いた銃声が埠頭に響き渡る
取引をしていたヤクザたちが
一斉にこちらに気づき叫びながらやって来る
俺は背負っていた巾着袋からS&W M500を取り出し
上着の脇腹にあるホルスターに収めた
先ほど奪った銃を片手に
コンテナとコンテナの隙間を駆け抜ける
背後から6人のヤクザが銃を乱射しながら追ってきた
俺はさっき見た二台の車の横を
まっすぐに走り抜ける
追手が車の横を通り過ぎる瞬間
俺は脇腹のホルスターからM500を抜き
車のボディを撃った
ドゴォォォンッ!
M500の弾丸は鉄板を紙のように貫通し
燃料タンクに突き刺さった
貫通の火花がガソリンに引火し
車が巨大な火の玉となって爆発する
追っていた6人が爆風に巻き込まれた
失神する者
深手を負ってのたうち回る者
一番軽傷で立ち上がろうとしているヤクザ
俺はその頭に銃口を突きつけた
滝沢:「銃を置け」
ヤクザは言われた通りに銃を地面に置く
俺はもう一台の爆発していない車を顎で指した
助手席側から乗れと指示する
そして運転しろと
俺も助手席に乗り込んだ
ヤクザ:「どどこに行くんだ?」
滝沢:「お前の頭のところに連れて行け」
ヤクザ:「俺たちが誰だか分かってんのか?」
男が興奮気味に叫ぶ
俺は銃身でヤクザの顔面を殴った
男の悲鳴が車内に響く
滝沢:「いいから早く行け」
一台の車が
炎上する地獄を背に
埠頭から走り去っていった