春の終わり……
高校の卒業式を迎えた2人は、再びあの丘に立っていた。

敬太は手に小さなキャンバスを持っていた。
それは、彼がこの一年間かけて描き続けた一枚の絵。
『見てほしいものがあるんだ!!』
そう言って、凛の前にそれを差し出す。

そこに描かれていたのは……

満開の桜の下、手を取り合う“2人の少女”と、“2人の青年”。

過去と現在、そして未来を生きる4人。
美咲と良規、凛と敬太。

『前の人生で、俺たちは壊しあった。でも、今回の人生で……ようやく“愛せた”気がするんだ……!!』

凛は静かに絵を見つめながら、言葉を紡ぐ。
「私、ずっと怖かった。誰かを好きになるのも、信じるのも。でも……敬太くんが全部変えてくれた……。“君だから”信じられたの……。」
『ありがとう、凛。生まれ変わっても、また君に出会えてよかった……。』

敬太が、そっと凛の手を取る。

すると……
その手のひらの中に、ひとつの光る鍵が浮かび上がった。
それは……
前の世界で2人を繋いでいた、“呪いの鍵”……。

けれど……
もう……
それは、鎖を繋ぐための鍵ではなかった……。
今は、未来を開くための扉の鍵。

凛が……
そっと……
その鍵に触れると、2人の周りの空気がふわりと揺れた。

風が吹く。
桜の花びらが舞い、まるで時空が再びほどけていくような……

そして、2人の背後に。
美咲と良規の姿が、淡く浮かび上がった。

美咲は静かに微笑む。
「ありがとう。凛、敬太。あなたたちが“選んでくれた愛”が、ようやく私たちを解放してくれた。」

良規もまた、柔らかな笑みを浮かべて頷く。
『もう、苦しまなくていい。これからは、2人で“幸せ”だけを抱いて生きてほしい。』

2人の幻は、優しい光となって桜の木々に吸い込まれていった……。