「ん…」




 ぐっすりと眠りに落ちていた意識が浮上して、ぼんやり目を開ける。

 見なれない天井をながめながら、保健室に来たんだっけ、と記憶をたぐりよせた。

 適当な仮病(けびょう)でベッドを借りたあと、どうせ時間をつぶすなら、と横になって寝たのだけど、今は何時になったのか。


 体を起こして、手ぐしで髪をととのえながら閉じた仕切りカーテンを開けると、となりのベッドに天草(あまくさ)が座っていた。




「あ、起きた?おはよう」




 思考を停止して、キラキラとしたさわやかな笑顔と見つめ合うこと数秒。




「…なんでいんの」




 思わず低い声がもれる。

 あからさまに いやな顔をしたからか、天草は苦笑いして立ち上がった。

 ベッドのあいだというせまい空間では距離が近くて、唯一の逃げ場である壁ぎわに数歩ズレる。