2組の前に来たらしい天草の声が聞こえる。
答える女子が言いよどんでいるのは、姫にえらばれなかったことがショックだからだろうか。
私としては、べつのだれかが氷室だと名乗り出てくれてもいいのだけど、そんなことをしてもすぐにバレるだろうし。
「あそこにいるウルフカットの女子が氷室冷那っす」
けっきょく、遊魁に所属するおなじクラスの男子に告げ口されて、私はため息をついた。
「氷室さん?」
天草に呼ばれてチラリと視線を向けると、やっぱり目が合ってしまう。
名乗り出ずに無視することはできなさそうだと観念して、私はゆっくり立ち上がった。
「私、姫なんて興味ないから、べつの子えらんで」
「え」



