壇上で、演説台を前にして立つ遊魁の総長・天草爽太郎がやわらかい声で言うと、「きゃーっ!」と体育館内のあちこちから黄色い悲鳴が上がった。
学年問わず、女子は今日この日を楽しみにしていたようだからしかたない。
それにしたって耳が痛くなる高音だけど。
私が思わず片手で耳をふさいだのとは対照的に、天草はサラサラの黒髪をゆらして、シュッとしたきれいな顔になだめるようなほほえみを浮かべた。
モデルかアイドルでもやっていそうな、さわやかなイケメンっぷりに加えて、“性格120点の極上男子”とうわさ される天草。
そんな彼が暴走族の総長なんて、ギャップどころではない役職をしているのは、彼の身内に由来する。



