「根本的なちがい。わかったでしょ、そこ通して」
ベッドから離れるには天草の前を通らなきゃいけない。
でもそんなにすき間がないから、天草にどいて道を作ってもらうのが一番スマートだ。
保健室の先生は今不在みたいだけど、まぁ勝手に教室にもどっても問題ないでしょ。
目を開けて、保健室のなかを見まわしたあとに天草を見ると、口角を上げたまま視線を返される。
「うん、わかった。だったら俺が言葉をえらばなかったら、姫になってくれる?」
「はぁ?」
なに言ってんの、と半目になれば、天草は道をあけるどころか、一歩二歩と私に近づいてきた。
うしろに下がりたくても もうスペースがないし、眉をひそめてただ見ていると、顔の横に伸びてきた手が壁にふれて、笑顔の天草が近距離から私を見下ろす。



