「氷室さんは“べつの子えらんで”って言ったけど、今の遊魁は学期ごとにくじ引きで姫を決めるのが絶対のルールなんだ」
「あんた、総長なんでしょ。だったらそのルールも変えればいいじゃん」
「俺はまだ総長になったばっかりで、伝統を変えられるほどの力はないから」
「あっそ。でも私、姫にも遊魁にも興味ないし、めんどくさそうなことはごめんだから」
腕を組んで、すこし高い位置にある天草の顔を見ると、天草はこまったように笑った。
「集会でも言ったけど、姫になっても義務とかはないんだよ?いやなことがあれば配慮するから、姫になりたくない理由、聞かせてくれない?」
「…はぁ」
顔をそむけてため息をついてから、私は“姫になるのが いやな理由”をならべる。



