〇透花の部屋・朝
必要最低限の物が整理された質素な部屋。
通帳を確認する透花。
透花(だいぶ、お金も溜まって来た。これならあとは卒業さえすれば――)
部屋の戸がノックされ、驚く透花。
透花母「透花?」
慌てて本の間に通帳を滑り込ませ、本棚に戻す。
透花、部屋の戸を開ける。
透花母「おはよう」笑顔
透花「おはよ、お母さん」
透花母「今から学校?」
透花「うん」
道を譲る透花母。玄関へ向かう透花。
靴を履く透花。後ろに立つ透花母。
透花母「透花。最近ずっと帰るのが遅いんじゃないの」
透花「うん、まあ」少しドキッとしつつ
透花母「……まさか彼氏透花じゃないよね?」
透花、目を細める。軽蔑するような目。
透花母「まだ早いわよ彼氏なんて。透花はまだ何もできないし、世間も知らなさすぎるきっと悪い男に利用されるか、相手に迷惑かけるだけなんだから。だって私ですら上手くいかないことだらけなのよ? あなたが上手くいくわけない。私はあなたの為を思って言ってるのよ透花。ただでさえ容量が悪いんだから、今は奇跡で入れた名門大学の勉強を頑張るべきで――」早口。
濁っていく透花の目。
靴を履き終え、振り返る透花。
透花「お母さん」
冷たい作り笑いの透花
透花「大丈夫。外で勉強してるだけだよ」
透花母、納得したように笑顔になる。
透花母「そうよね。ごめんね、お母さん心配性で」
透花(ああ)
透花「ううん。心配してくれてありがとう」
透花(――反吐が出る)
〇回想
大学で授業を受けたり百合と談笑する透花。男装カフェで働く透花。夜中に遊飛と酒を飲み交わす透花。
透花モ『あれから一ヶ月。あの日から、時々バイト終わりに先輩と会うようになった』
くすくすと笑う透花。
透花モ『話す事は他愛もない事ばかり。けどいつの間にかそんな些細な会話をする事が楽しみになっていた』
楽しそうに話している遊飛
透花モ『きっと先輩が優しい人だと知ってしまってから、抱いていた警戒心が解けてしまったんだと思う』
笑っている透花のアップ
透花モ『この人といると、自分も『普通』の大学生になれたと錯覚してしまう。……尤も』
時間経過
少し先の未来の回想。通帳を持っている透花母と呆然と立ち尽くす透花。
透花モ『そんな夢は、すぐに打ち砕かれたけど』
〇街中・夜中
男装カフェ『Magical House』の外装
透花「お疲れ様でーす」
キャスト「お疲れ様~」
駅へ向かう透花。
時間経過
家の前まで着いた時、オンスタのDM通知が来る。
『明日終わったら飲まない?』という遊飛からのメッセージ。
微笑む透花。
『了解』のスタンプを送る。
家の扉開ける。
リビングから話し声が小さく漏れている。
透花(今日は静かだ)ホッとする。
リビングを通り過ぎる透花。
透花母、廊下へ顔を出す。
透花母「ちょっと透花!」嬉々とした様子
透花「あ、ただいま」
透花母「おかえり……って、ちょっと来て!」
透花の腕を掴み、リビングへ連れていく透花。
テーブルに広げられた観光地のパンフレット、その傍に座っている透花父。
透花母「どこ行きたい!?」
透花「……え?」
透花母「旅行よ、旅行!」
透花「ちょ、ちょっと待って。旅行って……うち、そんなお金ないでしょ」
透花母「何言ってるのよ~、もう」冗談を言い合っているかのようなテンション
透花母、透花の通帳を見せる。
透花「……あ」青ざめる透花
透花母「あなたが集めてくれてたんじゃない」
透花「な、なんで、だってそれ」
透花母「大事に取っておいてくれたのよね。大丈夫、お母さんよーくわかってるから」
透花(この人、私の部屋のものを漁ったんだ……っ)
透花「そ、それ」震える透花
透花(言わなきゃ)
冷や汗が止まらなくなる透花
透花(だってそれは私がここを出る為の)
百合が他の友達とカラオケで遊んでいる姿
透花(友達が遊んでた時に沢山働いて貯めた……っ)
透花、拳を握り締める
透花「……か、して」
透花母「ん?」
透花「かえ、して……っ」震えながらも母を睨みつける
驚く透花母
透花「そ、それ、それ……は……っ、わた、わたしのっ」震えて上手く話せない
透花(きちんと言わないと)
透花「私の、お金だから……っ、お父さんやお母さんのじゃない……!」
きょとんとしていた透花母。
顔歪ませる。
透花母「……ハァ? アンタ誰のおかげで生活できてると思ってるの? アンタが無賃で生活できてたのは、アンタが働いてなかったからでしょ! 働いたらお金は家に入れる! これが常識なの!」大声で捲し立てる
ハク、と息を詰まらせる透花。言葉が出なくなる。
声を荒げる母の姿が幼少期の優しい母の姿に一瞬重なる。
透花父、立ち上がって透花に近づく。
顔を青くしたまま動けない透花。
振り被られる腕。
殴られた鈍い音。
〇透花の家の近所(公園)・夜中
誰もいない深夜の公園。
ベンチに座り込む透花の悲しそうな後ろ姿。震えている。
透花「や……」
プシュッとプルタブが開く。
ストワンのロング缶を開けながら叫ぶ透花。頬が赤く腫れている。
顔真っ赤。傍らにはストワンのロング缶が既に二本空いており、まだ空いていないお酒やお菓子が入ったレジ袋もある。
透花「~~~っ、てられかぁぁぁ~~~ッ!!」全ギレ。明らかに酔ってる。
酒を一気に煽る。
透花「ぬぁ~~にが『育ててやったのは誰だと思ってるんだ』だ! こっちはお前らみたいな親のとこに生まれたいなんて頼んでないんだよ! バーーーーカ!!」
顔真っ赤でしゃっくりをする透花。スマホが鳴る。
画面を開くと遊飛からのDM通知。『KP!』という乾杯のスタンプが送られている。
ぼんやりと画面を見つめる透花。
〇繁華街・夜中
いつもの六人グループで遊んでいた遊飛。
男友達「次の店どーする?」
遊飛「俺どこでも……ん」スマホが鳴る(着信)
遊飛(え、透花ちゃん……!?)画面見て驚く。
遊飛、友達にジェスチャーで断りを入れてその場を離れる。
電話に出る。
遊飛「透花ちゃ……」不思議そう
透花『せーーーんぱーーーーーーーーい!!』大音量で耳がキーンとする遊飛。
遊飛「……と、透花ちゃん!?」困惑
透花『は~~~い』
遊飛「どーしたの急に、てか」
透花『んぁ~? な~~んれもないれす~』一人でけらけら笑ってる
遊飛「……てか酔ってるよね?」
透花『…………よってないれふ!』暫しの間の後に元気な返事
遊飛(うん! 酔ってる!)迫真
遊飛「透花ちゃん、近くに人いる?」
透花『ん~~~ひとり』遠くから車の走る音や風の音のノイズ聞こえる
遊飛「……透花ちゃん今外にいる? 大丈夫?」
透花『だいじょぶじゃら~い』
遊飛(これはだいぶ酔ってるな)「透花ちゃんがこんなになる酒の量って一体……」と難しい顔
透花『は~~~、しにたい』明るく言う
遊飛、顔が強張り、青くなる。
窓ガラスに映った高校生の自分の濁った目を思い出す。
スマホに耳を傾ける遊飛の後ろ姿
遊飛「……透花ちゃん、今どこ」
透花『んぇ? ん~~~と』
遊飛「現在地送って~」笑顔取り繕う
透花『ん~』
遊飛「俺も混ざるから、そこいてね」現在地が届いたのを確認する
遊飛、通話繋げたままいつメンと合流する。
女友達「遊飛~?」
遊飛「ごめん、ちょっと帰るわ~」
男友達「え、嘘! 帰るっつったっておま、終電……」言ってる傍でタクシー拾って乗り込む遊飛の後ろ姿
女友達「何~? 急用?」
タクシーを見送るいつメン
〇透花の家の近所(公園)・夜中
缶を持ちながら横揺れしている透花
透花「それでさぁ、父親が『育ててやった分の借金があるのに踏み倒してるんだ』~って言ってボコーッてしてねぇ」
スマホを持ったまま真剣な顔で走る遊飛(目元は見えない)。
透花「母親はその横でずーっと怒ってるの、私をね、そんで~……」
遊飛、公園の入口へ着く。
透花、遊飛の姿を見つけて目を丸くする。
透花「え……」
遊飛「透花ちゃん」
遊飛急いで透花のもとへ駆け寄る
息を乱しながら笑う遊飛
透花「……なんで?」
遊飛「なんでって、透花ちゃんが送ったんでしょ。現在地」安堵して優しい笑みがこぼれる。
遊飛、ベンチに並ぶ空き缶のラインナップに気付く。
遊飛「うわ、酒豪おじさん」
透花「は~~~? おじさんってわたしに言ってる~~!?」
遊飛「うわ声でか! ちょっと声抑えようね~おじさん」
透花「おじさんじゃな~~い~~」
遊飛、透花の頬が晴れていることに気付いて目を伏せる。
買って来ていた水のペットボトルを透花の頬に当てる。
透花「っていうかなんで――」
遊飛「透花ちゃん」
不思議そうに見あげる透花。中腰で目線を合わせる遊飛。
遊飛「頑張ったね~」
きょとんとする透花。
透花「……なんで」
呆けた顔のまま、ぽろぽろと涙が零れる。
透花「なんで、やさしくするのぉ……?」顔を手で覆う。
遊飛「よ~しよしよし」透花の頭を撫でる
透花「い~~~やだぁ」
遊飛を押しのけようとする透花。
透花「やさしくされたら、期待しちゃう……」
透花の様子を窺う遊飛。
顔隠したままの透花。
母の顔が過る。
透花「期待したら……また苦しくなる……」震える
労わるように透花を見る遊飛。
遊飛「透花ちゃん」
手を放して顔を上げる透花。
遊飛、しゃがみ込んで透花を覗き込む。
遊飛「うちおいでよ」
透花涙で顔を濡らしたままきょとん顔
透花「…………」
呆然とする透花
透花「……はい?」
必要最低限の物が整理された質素な部屋。
通帳を確認する透花。
透花(だいぶ、お金も溜まって来た。これならあとは卒業さえすれば――)
部屋の戸がノックされ、驚く透花。
透花母「透花?」
慌てて本の間に通帳を滑り込ませ、本棚に戻す。
透花、部屋の戸を開ける。
透花母「おはよう」笑顔
透花「おはよ、お母さん」
透花母「今から学校?」
透花「うん」
道を譲る透花母。玄関へ向かう透花。
靴を履く透花。後ろに立つ透花母。
透花母「透花。最近ずっと帰るのが遅いんじゃないの」
透花「うん、まあ」少しドキッとしつつ
透花母「……まさか彼氏透花じゃないよね?」
透花、目を細める。軽蔑するような目。
透花母「まだ早いわよ彼氏なんて。透花はまだ何もできないし、世間も知らなさすぎるきっと悪い男に利用されるか、相手に迷惑かけるだけなんだから。だって私ですら上手くいかないことだらけなのよ? あなたが上手くいくわけない。私はあなたの為を思って言ってるのよ透花。ただでさえ容量が悪いんだから、今は奇跡で入れた名門大学の勉強を頑張るべきで――」早口。
濁っていく透花の目。
靴を履き終え、振り返る透花。
透花「お母さん」
冷たい作り笑いの透花
透花「大丈夫。外で勉強してるだけだよ」
透花母、納得したように笑顔になる。
透花母「そうよね。ごめんね、お母さん心配性で」
透花(ああ)
透花「ううん。心配してくれてありがとう」
透花(――反吐が出る)
〇回想
大学で授業を受けたり百合と談笑する透花。男装カフェで働く透花。夜中に遊飛と酒を飲み交わす透花。
透花モ『あれから一ヶ月。あの日から、時々バイト終わりに先輩と会うようになった』
くすくすと笑う透花。
透花モ『話す事は他愛もない事ばかり。けどいつの間にかそんな些細な会話をする事が楽しみになっていた』
楽しそうに話している遊飛
透花モ『きっと先輩が優しい人だと知ってしまってから、抱いていた警戒心が解けてしまったんだと思う』
笑っている透花のアップ
透花モ『この人といると、自分も『普通』の大学生になれたと錯覚してしまう。……尤も』
時間経過
少し先の未来の回想。通帳を持っている透花母と呆然と立ち尽くす透花。
透花モ『そんな夢は、すぐに打ち砕かれたけど』
〇街中・夜中
男装カフェ『Magical House』の外装
透花「お疲れ様でーす」
キャスト「お疲れ様~」
駅へ向かう透花。
時間経過
家の前まで着いた時、オンスタのDM通知が来る。
『明日終わったら飲まない?』という遊飛からのメッセージ。
微笑む透花。
『了解』のスタンプを送る。
家の扉開ける。
リビングから話し声が小さく漏れている。
透花(今日は静かだ)ホッとする。
リビングを通り過ぎる透花。
透花母、廊下へ顔を出す。
透花母「ちょっと透花!」嬉々とした様子
透花「あ、ただいま」
透花母「おかえり……って、ちょっと来て!」
透花の腕を掴み、リビングへ連れていく透花。
テーブルに広げられた観光地のパンフレット、その傍に座っている透花父。
透花母「どこ行きたい!?」
透花「……え?」
透花母「旅行よ、旅行!」
透花「ちょ、ちょっと待って。旅行って……うち、そんなお金ないでしょ」
透花母「何言ってるのよ~、もう」冗談を言い合っているかのようなテンション
透花母、透花の通帳を見せる。
透花「……あ」青ざめる透花
透花母「あなたが集めてくれてたんじゃない」
透花「な、なんで、だってそれ」
透花母「大事に取っておいてくれたのよね。大丈夫、お母さんよーくわかってるから」
透花(この人、私の部屋のものを漁ったんだ……っ)
透花「そ、それ」震える透花
透花(言わなきゃ)
冷や汗が止まらなくなる透花
透花(だってそれは私がここを出る為の)
百合が他の友達とカラオケで遊んでいる姿
透花(友達が遊んでた時に沢山働いて貯めた……っ)
透花、拳を握り締める
透花「……か、して」
透花母「ん?」
透花「かえ、して……っ」震えながらも母を睨みつける
驚く透花母
透花「そ、それ、それ……は……っ、わた、わたしのっ」震えて上手く話せない
透花(きちんと言わないと)
透花「私の、お金だから……っ、お父さんやお母さんのじゃない……!」
きょとんとしていた透花母。
顔歪ませる。
透花母「……ハァ? アンタ誰のおかげで生活できてると思ってるの? アンタが無賃で生活できてたのは、アンタが働いてなかったからでしょ! 働いたらお金は家に入れる! これが常識なの!」大声で捲し立てる
ハク、と息を詰まらせる透花。言葉が出なくなる。
声を荒げる母の姿が幼少期の優しい母の姿に一瞬重なる。
透花父、立ち上がって透花に近づく。
顔を青くしたまま動けない透花。
振り被られる腕。
殴られた鈍い音。
〇透花の家の近所(公園)・夜中
誰もいない深夜の公園。
ベンチに座り込む透花の悲しそうな後ろ姿。震えている。
透花「や……」
プシュッとプルタブが開く。
ストワンのロング缶を開けながら叫ぶ透花。頬が赤く腫れている。
顔真っ赤。傍らにはストワンのロング缶が既に二本空いており、まだ空いていないお酒やお菓子が入ったレジ袋もある。
透花「~~~っ、てられかぁぁぁ~~~ッ!!」全ギレ。明らかに酔ってる。
酒を一気に煽る。
透花「ぬぁ~~にが『育ててやったのは誰だと思ってるんだ』だ! こっちはお前らみたいな親のとこに生まれたいなんて頼んでないんだよ! バーーーーカ!!」
顔真っ赤でしゃっくりをする透花。スマホが鳴る。
画面を開くと遊飛からのDM通知。『KP!』という乾杯のスタンプが送られている。
ぼんやりと画面を見つめる透花。
〇繁華街・夜中
いつもの六人グループで遊んでいた遊飛。
男友達「次の店どーする?」
遊飛「俺どこでも……ん」スマホが鳴る(着信)
遊飛(え、透花ちゃん……!?)画面見て驚く。
遊飛、友達にジェスチャーで断りを入れてその場を離れる。
電話に出る。
遊飛「透花ちゃ……」不思議そう
透花『せーーーんぱーーーーーーーーい!!』大音量で耳がキーンとする遊飛。
遊飛「……と、透花ちゃん!?」困惑
透花『は~~~い』
遊飛「どーしたの急に、てか」
透花『んぁ~? な~~んれもないれす~』一人でけらけら笑ってる
遊飛「……てか酔ってるよね?」
透花『…………よってないれふ!』暫しの間の後に元気な返事
遊飛(うん! 酔ってる!)迫真
遊飛「透花ちゃん、近くに人いる?」
透花『ん~~~ひとり』遠くから車の走る音や風の音のノイズ聞こえる
遊飛「……透花ちゃん今外にいる? 大丈夫?」
透花『だいじょぶじゃら~い』
遊飛(これはだいぶ酔ってるな)「透花ちゃんがこんなになる酒の量って一体……」と難しい顔
透花『は~~~、しにたい』明るく言う
遊飛、顔が強張り、青くなる。
窓ガラスに映った高校生の自分の濁った目を思い出す。
スマホに耳を傾ける遊飛の後ろ姿
遊飛「……透花ちゃん、今どこ」
透花『んぇ? ん~~~と』
遊飛「現在地送って~」笑顔取り繕う
透花『ん~』
遊飛「俺も混ざるから、そこいてね」現在地が届いたのを確認する
遊飛、通話繋げたままいつメンと合流する。
女友達「遊飛~?」
遊飛「ごめん、ちょっと帰るわ~」
男友達「え、嘘! 帰るっつったっておま、終電……」言ってる傍でタクシー拾って乗り込む遊飛の後ろ姿
女友達「何~? 急用?」
タクシーを見送るいつメン
〇透花の家の近所(公園)・夜中
缶を持ちながら横揺れしている透花
透花「それでさぁ、父親が『育ててやった分の借金があるのに踏み倒してるんだ』~って言ってボコーッてしてねぇ」
スマホを持ったまま真剣な顔で走る遊飛(目元は見えない)。
透花「母親はその横でずーっと怒ってるの、私をね、そんで~……」
遊飛、公園の入口へ着く。
透花、遊飛の姿を見つけて目を丸くする。
透花「え……」
遊飛「透花ちゃん」
遊飛急いで透花のもとへ駆け寄る
息を乱しながら笑う遊飛
透花「……なんで?」
遊飛「なんでって、透花ちゃんが送ったんでしょ。現在地」安堵して優しい笑みがこぼれる。
遊飛、ベンチに並ぶ空き缶のラインナップに気付く。
遊飛「うわ、酒豪おじさん」
透花「は~~~? おじさんってわたしに言ってる~~!?」
遊飛「うわ声でか! ちょっと声抑えようね~おじさん」
透花「おじさんじゃな~~い~~」
遊飛、透花の頬が晴れていることに気付いて目を伏せる。
買って来ていた水のペットボトルを透花の頬に当てる。
透花「っていうかなんで――」
遊飛「透花ちゃん」
不思議そうに見あげる透花。中腰で目線を合わせる遊飛。
遊飛「頑張ったね~」
きょとんとする透花。
透花「……なんで」
呆けた顔のまま、ぽろぽろと涙が零れる。
透花「なんで、やさしくするのぉ……?」顔を手で覆う。
遊飛「よ~しよしよし」透花の頭を撫でる
透花「い~~~やだぁ」
遊飛を押しのけようとする透花。
透花「やさしくされたら、期待しちゃう……」
透花の様子を窺う遊飛。
顔隠したままの透花。
母の顔が過る。
透花「期待したら……また苦しくなる……」震える
労わるように透花を見る遊飛。
遊飛「透花ちゃん」
手を放して顔を上げる透花。
遊飛、しゃがみ込んで透花を覗き込む。
遊飛「うちおいでよ」
透花涙で顔を濡らしたままきょとん顔
透花「…………」
呆然とする透花
透花「……はい?」


