そんな夢ならもう一度会いたい

「ありがとう高須!高須が手伝ってくれたから早く終わったよ!」

「……。」

結局、帰るタイミングがなくて最後まで手伝ってしまった。まぁいいけど、どうせすることもなかったんだし。

濡れたデッキブラシを立てかけて、今度こそ帰ろうかとスクールバッグを…

「あ、待って!ご褒美、約束したじゃん?」

“ありがとう高須あとでご褒美をやろう!!”

いや、それは門倉先生が勝手に取り付けた約束で私はした覚えないんだけど…
意気揚々と校舎の中に入って階段を下りて行ったから、屋上に取り残されてしまって。

さすがにここで帰るのはあれだよね、明日何言われるかわかんない。…しょうがない、待つか。

一応、待ってみた。

フェンスの上に腕を投げ出すように置いて空を見れば、ちょっとずつ日が暮れていく様子が見える。この時期は日が暮れるのが遅いから…

「高須!」

あ、思ったより早く帰って来た。
はぁはぁと息を切らして、そこまで急がなくてもいいのにって思う私にはいっと差し出した。

「ガリガリ君!」

ソーダ味。
うん、おしいいけどね。私も好きだけどね。

まさかこれを渡されるとは思ってなくて。

「食おーぜ!」

「……。」

子供みたいに笑う、門倉先生が。


子供なの?
17歳までの記憶ないんだもんね、子供の頃の記憶がないってことだもん。