さよならの勇気~お隣さんはクールで意地悪な産業医~

「綾ちゃん、急にどうしたの?」
「だって石黒くん、私のこと好きじゃないでしょ? 私のこと好きだったらそんな嘘つかないよ。私が一人で高い家賃を払うのだって、心配していなかったし、バイトを始めるのだって止めなかったじゃない。私が深夜に働くの心配じゃなかったの? この間、会社の廊下で会った時、私が泣いた顔をしていたのに気づいた?」

 溜まっていた不満が堰を切ったようにドッと溢れ出た。
 石黒くんの顔がだんだん険しくなる。

「めんどくさ。だから27歳まで処女だったんだよ。地味で冴えない綾ちゃんと付き合ってあげたのに、その言い草ないんじゃないの?」

 私を見下した発言を聞いて、完全に恋心が醒めた。
 こんな人を好きになって、夢中になっていた自分が心底情けない。

「帰って!」

 石黒くんが立ちあがる。
 大人しく帰ると思ったら、いきなりソファに押し倒された。

「帰らないよ。かまってあげなかったから、ちょっと拗ねてるだけだろ?」
「離して!」

 石黒くんの顔が近づき、キスされそうになる。

「いやー!! 誰か助けて!」

 石黒くんから顔を背けて、そう叫んだ時、誰かが部屋に入って来て、私の上に覆いかぶさっていた石黒くんを投げ飛ばした。