「彼氏がいる女性はそんなことを言ってはダメです。僕だって男ですから」
眼鏡越しの瞳がじっとこちらを見る。
その強い視線に思わず後ろに一歩引くと、先生が私との距離を縮めるように近づく。さらに私が引くと、先生が無言で間を詰める。
コツンとマンションの壁に背中が当たり、壁際に追い詰められた私はもう逃げ場がない。
「先生、あの」
黙ったまま先生が私を見つめ、私を閉じ込めるように左腕を壁につく。その瞬間シトラスの香りに包まれた。
私たちの間には、さっきまでとは違う、張り詰めた緊張感が漂っている。一歩でも動いたら、何かが壊れてしまいそうだ。
熱を孕む眼鏡越しの瞳に見つめられて、何も言えなくなる。
なんでそんなに色っぽい表情で私を見つめるの? 昼間の先生とは違う表情をするのはなんで? 先生は私のことを……。
「一条さん、真っ赤ですよ」
私を見つめたまま先生が意地悪く笑う。
「だって先生がこんなに近くに」
「少しは僕を男性として意識した?」
「……はい」
「よろしい」
そう言うと先生はすっと離れた。
解放されてほっとする。
その後は何事もなかったように先生とマンションに入り、一緒にエレベーターに乗って、部屋の前で別れた。部屋に入った瞬間、脱力して床に座り込んだ。一体今のは何だったの?
なんで私、こんなにドキドキしているの? 石黒くん以外の男性にドキドキしている自分に訳がわからなくなった。
これ以上、考えてはいけないと思うのに、先生のことばかりが思い浮かぶ。私を熱っぽく見つめた先生の顔が忘れられない。
それにいつも私を見守る姿……。私の体調を心配してくれて、弱っている私に気づいてくれた。無表情で冷たいと思っていたけど、こんな私を心配してくれる先生は本当はすごく優しい人だ。だから、私はそんな先生を……。
ダメだ。この気持ちは抱えてはいけないものだ。忘れなきゃ。
眼鏡越しの瞳がじっとこちらを見る。
その強い視線に思わず後ろに一歩引くと、先生が私との距離を縮めるように近づく。さらに私が引くと、先生が無言で間を詰める。
コツンとマンションの壁に背中が当たり、壁際に追い詰められた私はもう逃げ場がない。
「先生、あの」
黙ったまま先生が私を見つめ、私を閉じ込めるように左腕を壁につく。その瞬間シトラスの香りに包まれた。
私たちの間には、さっきまでとは違う、張り詰めた緊張感が漂っている。一歩でも動いたら、何かが壊れてしまいそうだ。
熱を孕む眼鏡越しの瞳に見つめられて、何も言えなくなる。
なんでそんなに色っぽい表情で私を見つめるの? 昼間の先生とは違う表情をするのはなんで? 先生は私のことを……。
「一条さん、真っ赤ですよ」
私を見つめたまま先生が意地悪く笑う。
「だって先生がこんなに近くに」
「少しは僕を男性として意識した?」
「……はい」
「よろしい」
そう言うと先生はすっと離れた。
解放されてほっとする。
その後は何事もなかったように先生とマンションに入り、一緒にエレベーターに乗って、部屋の前で別れた。部屋に入った瞬間、脱力して床に座り込んだ。一体今のは何だったの?
なんで私、こんなにドキドキしているの? 石黒くん以外の男性にドキドキしている自分に訳がわからなくなった。
これ以上、考えてはいけないと思うのに、先生のことばかりが思い浮かぶ。私を熱っぽく見つめた先生の顔が忘れられない。
それにいつも私を見守る姿……。私の体調を心配してくれて、弱っている私に気づいてくれた。無表情で冷たいと思っていたけど、こんな私を心配してくれる先生は本当はすごく優しい人だ。だから、私はそんな先生を……。
ダメだ。この気持ちは抱えてはいけないものだ。忘れなきゃ。



