「先生!俺、部活を立ち上げたいです!」
五月くんが先生に提案すると、先生はあっさり承認してくれた。
部活の内容は、悩んでいるひとや困っているひとを助けたい、というもの。
五月くんが転入生だからか、先生は五月くんがこの学校に慣れるきっかけにもなっていいだろうって、簡単にOKしてくれた。
部室はちょうど空き教室となっていた、地学準備室を使わせてもらうことになった。
「五月くんの行動力すごいね!あっという間に部活ができちゃった!」
「まあな!善は急げって言うだろ!やろうと思ったときにやらなくちゃな!」
五月くんはえっへんと胸を張る。
五月くんは転入してすぐにクラスの人気者になった。
持ち前の明るさや人懐っこさもあると思うけど、転校に慣れてるみたいで、どんな子でもすぐに仲良くなっちゃうんだ。
クールな蓮詞にお熱だった女の子たちも、半分くらい五月くん推しになった気がする。
「さっそく活動開始!と、いきたいところなんだけど、一応部活として活動するから部の名前が必要なんだ。桜彩、なんかアイデアない?」
「部の名前かぁ。活動目的は、困ったひとを助けることだよね?」
「そう!」
「うーん、そうだなぁ……」
私は少しの間考えて、ぽつりぽつりとアイデアを口にしていく。
「お助け部、助っ人部、ヘルプ部?とか?」
「心の相談部、お悩み相談部、とか……。相談するだけじゃだめか、解決しなきゃ
だもんな……」
私と五月くんは「あ!」と同時に思いついて、その名前を口にする。
「お悩み解決部とか!」
「お悩み解決部はどうだ?」
ふたりの口から同じ単語が出てきて、私と五月くんは顔を見合わせて笑った。
「すげー以心伝心!よっし!この部は、お悩み解決部にしよう!」
「賛成!」
部と活動目的はこれで決定!
あとは、困っているひとや助けが必要なひとをどうやって見つけたらいいんだろう?
この議題に、私たちは少しの間考えてみたけれど、なかなかいい案が思い浮かばなくて、少し休憩することにした。
「なあ、桜彩。俺たちみたいに、なにか能力を持ったひとって他に知ってるか?」
「え?」
地学準備室の窓からグラウンドを覗いていた五月くんが、私を振り返って尋ねた。
「俺、桜彩が初めてだったんだよ。変わった能力を持ってる子に会うのは」
「そうだったんだ。私も聞いたことないけど……」
とそこまで言って、はたと思い当る。
「能力、なのかわからないけど、そういえば―」
私が口を開きかけると、ガラっと音を立てて地学準備室にとある生徒がやってきた。



