「俺、昨日すげー早く桜彩のもとに行けただろ?」
たしかにその場にいなかったはずの五月くんは、どこかから急に現れて、ものすごい勢いで私の真下まで来ていた。
「それが俺の能力なんだ。高速移動。目にも止まらぬ速さで走ることができる」
「高速移動……!そっか!だからあのとき、気が付いたら五月くんは私の真下にいたんだ!」
「そういうこと」
すごい!そんな能力を持っているひとがいるなんて!
私は嬉しくなった。
「私の能力を信じてくれたのも、自分が能力を持っていたからなんだね!」
「まぁそれもあるけど。昨日の桜彩、自分が怪我するかもしれないのに、すげー安心しきってたから。俺が来るのがわかってたみたいに」
「うん!わかってたよ、五月くんが来てくれるって」
五月くんはふいに私の手を握って、その距離をぐいっとつめてくる。
「桜彩、頼みがある!」
「え?」
「俺と、組んでほしい!!」
五月くんの言葉に、私はきょとんと首を傾げる。
「組む?」
「俺、この高速移動の能力を生かしたいんだ。せっかく持ってる力を誰かのために使いたい!」
「わ、私も!5秒先の未来を見ることでなにか変わるなら、この能力を誰かのために使いたいって思ってるよ!」
五月くんは嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
「俺と桜彩の能力があれば、絶対にいろんなひとを助けられる!俺と一緒に、人助けをしよう!」
「人助け……それってすごく素敵!うん!やろう!」
この不思議な能力を生かしたいって、ずっと思ってた。
私の能力と五月くんの高速移動があれば、困ったひとを助けられるかもしれない……!
私と五月くんは、力強く握手をかわした。



