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 朝のホームルームが終わると、五月くんはあっという間にクラスメイトに囲まれてしまった。

「どこから来たの?」
「部活入る?」
「彼女いる?」

 なんて質問攻め。
 うん、転入生あるあるだねぇ。
 そんなたくさんの質問ひとつひとつに、五月くんは笑顔でていねいに答えていた。

「五月くん、さっそく大変そうだね」

 前の席の蓮詞に声をかけると、蓮詞はくいっと眼鏡を上げて。

「よくもまぁ、あんなに律儀に回答できるもんだ」
 とやや呆れたようにつぶやく。

「蓮詞も少し見習ったら~?」

 私が少しからかうと、蓮詞は真面目に返してくる。

「結構だ。俺はそういうのは得意じゃない」
「私とは話すのにね。もったいない」

 みんな蓮詞と話したがっていると思うんだけど、当の本人は面倒くさいみたい。
 せっかくお友達ができるチャンスなのに。
 そんな話を蓮詞としていると、ふいに五月くんから声をかけられる。

「未来さん」
「あ、はい!なあに?」
「放課後、校舎案内してもらいたいんだけど、いい?」

 五月くんの言葉に、私はうんとうなずく。

「もちろん!」
「じゃあ放課後、よろしく!」
「うん!」

 五月くんは嬉しそうに笑ってクラスメイトの輪に戻って行った。



 放課後、約束通り私は五月くんに校舎を案内してあげた。

「で、ここを真っ直ぐ行くと体育館。室内からももちろん行けるけど、私たちの教室からだと外廊下のほうが近いかも」
「へえ」

 そんなふうに案内していると、五月くんは渡り廊下で足を止める。

「未来さん」
「桜彩でいいよ、みんなそう呼ぶから」
「え。えっと、じゃあ桜彩」
「うん!」

 五月くんはさっきまでの笑顔を消すと、私を真剣に見つめる。

「昨日言ってた話、ほんと?」

「え?」

「俺が桜彩を助ける未来が見えた、って話」

「うん、本当だよ。五月くんが来て、私を助けてくれる未来が見えたの。いつ見えるのかは私にもわからないんだけど、たまに5秒先くらいの未来が見えるんだ」

 私の言葉に、五月くんはまた目を丸くしていた。

「マジかよ……」
「やっぱり普通はなかなか信じられないよね」

 今までも色んな人に未来が見える話をしてきたけど、信じてくれたのは蓮詞くらい。
 大体のひとは私の話をちょっと変わったこと言うなぁ、くらいにしか思ってない。
 だから五月くんもあんまり信じてないかな、って思っていたんだけど……。


「信じるよ」
 五月くんはそう強く言ってくれた。

「本当に?」
「うん」

 信じてもらえると思っていなかったから、逆に私のほうが驚いちゃった。

「だって、俺も他人にはない能力を持っているから」
「え?」

 五月くんの言葉に、今度は私が驚く番だった。