翌日、放課後。一年一組の教室にて。
私たちお悩み解決部は、依頼主の真宮 陽斗くんと向かいあっていた。
「疎遠になってしまった友人と仲直りがしたい、ということだが、もう少し詳しく聞かせてくれるか?」
眼鏡をくいっと上げた蓮詞が、陽斗くんを見つめて質問する。
陽斗くんはしゃきっと姿勢を正すと、ていねいに話し始める。
「は、はい!僕には、とても仲のいい友達がいたんです。一個上でしたがなにをするにも一緒で、放課後はよく遊んでいました」
陽斗くんは私たちにわかりやすいように順序立てて話してくれているみたいだった。
「僕とその友達は、地域のバスケットボールクラブに入っていました。自分で言うのもなんですが、監督から褒められることも多くて、僕たちはレギュラーで試合に出させてもらうことが多かったです」
「へぇ!すごいね!」
私の相づちに、少し照れくさそうに笑う陽斗くん。
しかしその表情が少し曇る。
「そんなときでした。僕が事故に遭ってしまったのは」
「え……?」
「僕とその友達が自転車に乗って、バスケの練習に向かっていたときのことです。角からものすごいスピードで曲がってきた車に、僕はひかれました」
「えっ」
驚きでなにも言えなくなる私たちに、陽斗くんは慌てて話を続ける。
「あ、大丈夫です!この通り、今はすっかり元気ですし!……でも、バスケはできなくなってしまいました……」
陽斗くんは、交通事故の後遺症で、走ったりする激しい運動ができなくなっちゃったんだって。
「すごくショックでした。大好きなバスケができなくなって。将来バスケットボールの選手も目指していましたから……」
胸がぎゅっとなる私たちに、陽斗くんは暗くならないよう、明るく言葉を紡ぐ。
「それからは治療とリハビリの日々だったのですが、毎日のようにお見舞いにきてくれていた友達に、僕はひどいことを言ってしまったんです」
『バスケの練習があるだろ!僕なんかにかまってないで練習しなよ!ぼくと違ってきみは、バスケ選手になれるんだから!』
陽斗くんは、事故のショックとリハビリの疲れで、友達にそんなことを言ってしまったんだって。
「友達はすごく傷ついたような顔をしていました。事故のときも、友達が『危ない!』って言ってくれてたんです。それなのに俺は急に止まれなくて、そのまま車に飛び出してしまった。僕を守ろうとしてくれた、支えようとしてくれた友達に、一時の感情で怒りをぶつけてしまったんです……」
陽斗くんの表情がまた苦しそうにゆがむ。
「後悔しました。明日もしまたお見舞いに来てくれたら絶対に謝ろうって思いました。でも、彼とはそれきり会えなくなってしまいました……」
「どうして、ですか?」
「知らないうちに引っ越してしまったんです」
「引っ越し……」
「もうひとつ衝撃的だったのが、友達は僕が事故に遭ってすぐにバスケのクラブチームをやめていたみたいなんです。その頃にはもしかしたら引っ越しも決まっていて、それでクラブをやめたのかもしれませんけど……」
陽斗くんは伏せた顔を上げると、私たちを見つめる。
「それで、僕はその友達にもう一度会いたいんです!僕のせいで傷付けたことを謝りたい!仲直りがしたい、って言いましたけど、仲直りはできなくてもいいんです!ただ、あのときはひどいこと言ってごめんって、僕のことを思って助けようとしてくれてありがとうって、それだけ伝えたいんです!」
陽斗くんの言葉に、私たちはうなずく。
「うん!絶対に、見つけ出そう!そのお友達を!」
「ありがとうございますっ!」
陽斗くんは、今にも泣き出しそうな顔で笑った。
「しかし、探す、といっても彼は引っ越してしまったのだろう?」
「そうですね、転勤族の可能性もありますし、引っ越し先からまた引っ越している可能性もありますよね」
「とりあえず!誰か知っている人がいるかもしれないから、そのバスケのクラブチームとかをあたってみようよ!」
私の提案に、「そうだな、時間はかかるかもしれないができないことはないだろう」、「行動あるのみです!」と、蓮詞と椿妃ちゃんもうなずいてくれた。
「あ、そうだ!その会いたい友達の子の名前って、聞いてもいい?」
「あ、はい!もちろんです!名前は―――」



