ある日の放課後。地学準備室。
今日もいつものようにお悩み解決部は、お悩み相談BOXに入っているメモを確認していました。
『好きな男の子に手作りお菓子を渡したいです。でもお菓子を作ったことがなくて困っています』
そのような相談メモが入っていました。
私は読み上げると、みんなの顔を見回しました。
「わあ!手作りお菓子かぁ!いいねぇ!」
とびきりキュートな笑顔の桜彩ちゃん。
「お菓子作りか~、俺も作ったことないんだよなぁ」
困ったようにうなる旭日くん。
「知識くらいはあるが、実践した経験は少ないな」
そう藤村くんも言いました。
みんなのそれぞれの反応にうなずいた私は、立ち上がります。
「ではこの案件は、私と桜彩ちゃんが担当します!」
私の言葉に、桜彩ちゃんが驚いたように言います。
「え、椿妃ちゃん、私も?私で大丈夫かなぁ?」
心配そうな桜彩もとってもかわいいな、と思いつつ、私はその手を握ります。
「私と桜彩ちゃんなら絶対に大丈夫です!ふたりでがんばりましょうっ!」
少し不安そうにしていた桜彩ちゃんは、うん!とうなずくと「わかった!椿妃ちゃん!一緒にがんばろう!」と言ってくれました。
「じゃ、この案件は桜彩と北條さんに任せるな!」
「俺たちは他の案件を担当しよう」
「はい!」
こうして私と桜彩ちゃん、ふたりきりでのお悩み解決がはじまりました。
私は内心、にやにやと笑いが止まりませんでした。
桜彩ちゃんとふたりきり!ずっと一緒!わーい!!
と飛び上がりたい気持ちです。
ですがここは冷静に。
しっかりと相談をこなし、尚且つ、桜彩ちゃんにかっこいいところを見せなくてはなりません。
桜彩ちゃんにがっかりされるような失敗はできないのです。
私は大きく深呼吸を繰り返し、気合を入れました。
その晩私はお菓子作りの動画をひらすらに見て、簡単なクッキーやパウンドケーキなんかを焼いてみました。
もともと料理やお菓子作りは得意だったのですが、明日は相談をくれた子と会うことになっていますし、予習がてら作ってみようと思ったのです。
相談の子がどんなお菓子を作りたいかはわかりませんが、私は自信を持って依頼にのぞめそうでした。
そうして翌日の放課後。
家庭科室。
私と桜彩ちゃんは、相談主である一年三組の櫻井さんと向き合っていました。
「ほ、本日はよろしくお願いしますっ!」
とてもかしこまった様子で頭を下げる櫻井さんに対して、桜彩ちゃんは「お悩み解決部の未来 桜彩です!よろしくねぇ~」と相変わらずのかわいい笑顔で手を振っています。
私も「同じく北條 椿妃です」とぺこりとお辞儀しました。
「好きな子にお菓子を作って渡したいんだよね?」
「は、はい!」
「どんなお菓子を作りたいかは決まってる?」
桜彩ちゃんが尋ねると、櫻井さんは「はい!」とスマホを取り出して、その画面に映るものを見せてくれました。
「こういう、かわいいカップケーキが作りたいです!」
櫻井さんが見せてくれた画面には、フルーツがたくさん乗ったカップケーキや、動物のお顔が描かれたもの、ハートや星型のチョコレートが乗ったものなど、見た目にもすごくかわいらしいカップケーキが表示されていました。
「わぁ!かわいい!!」
それを見た桜彩ちゃんが、目を輝かせて声を上げます。
「こういうの、私でも作れますか?」
不安そうにこちらを見上げる櫻井さん。
私と桜彩ちゃんは顔を見合わせて、大きくうなずきます。
「カップケーキなら私も作ったことあるよ!」
「一緒にかわいいカップケーキを作りましょう!」
私たちの言葉に、櫻井さんはほっとしたようにうなずきました。



