「なるほどね!さっすが学年一位!教え方もすっごくわかりやすい!」
「それはどうも」
「じゃ、ひとまず休憩にしまして……」
「早くないか?」
「だってせっかく淹れてくれた紅茶が冷めちゃう!お菓子もありがとう!フィナンシェだ!」
桜彩は嬉しそうにお菓子を頬張る。
こうして喜んでもらえると、やはりどうしても美味しいお菓子を用意したくなってしまう。
少し甘やかしすぎだろうか……?
「蓮詞の瞬間記憶って、いいよね。勉強にもやっぱり役に立つの?」
「そうだな……一度見たものは忘れないから、先生が授業で言っていたこと、黒板に書いていた文字なんかも記憶している」
「すごい!」
「まぁ、数学や化学なんかの毎回数字が変わって解くものでは、あまり役に立たないかもしれないが、暗記系は得意かもな」
「いいなぁ~!私なんて寝たらすぐに忘れちゃうよ!」
「まぁ、大抵はそうだから、繰り返し勉強が必要なんだろうな」
「便利そうだけどなんでも覚えてたら頭疲れちゃいそう~」と桜彩はまたお菓子を一口口に入れる。
「桜彩は最近はどうなんだ?やっぱり未来を見るのか?」
「うん、まぁときどき!私の能力は相変わらずいつ発動するかわからないんだよね」
「そうか」
桜彩は幼少の頃の事故をきっかけに能力を得た。
その発動条件は不明だが、どうやら危ないことが起きるときが多いようだった。
桜彩の能力が発動すると言うことは、なにか危ないめにあっているのではないかと少し心配になる。
「それにしても!まさか私たちが部活をはじめるなんて思わなかったね!」
俺の心配をよそに、桜彩は明るく話題を変える。
「そうだな、桜彩と五月に強引に誘われなければ、きっと入っていなかっただろうな」
「え?私たち強引に誘ったりしたっけ?」
「同じ意味だろう」
頭上に「?」マークを浮かべながら、「そうだっけ?」と首を傾げる桜彩。
ふつう心配だろ。大事な幼なじみが、転入してきたばかりの男子とずっと一緒にいるだなんて。
「そう言えばこの前から、五月くんと休日にお散歩してるの!」
「なに?」
桜彩の言葉に、俺は聞き間違いかと思い少し身を乗り出す。
「五月くん、困ってるひとがいないか、見て回りながら街をお散歩してるんだって。私も歩くの好きだから、最近一緒にお散歩してるんだ」
「そう、なのか」
旭日 五月。高速移動の能力者。
五月がいれば、桜彩が危ないめにあったとしても高速で助けてくれるのだろうが……。
なんだろう、このもやもやとした嫌な感情は。
「この前お散歩してたときにね、美味しいクレープ屋さんを見つけたの!五月くんも甘いもの大好きなんだって!一緒にクリームがもりもり乗った苺のクレープを頼んだんだけどね、五月くんが――」
気が付けば俺は、桜彩の口にフィナンシェを突っ込んでいた。
「んぐっ!?」と驚いたようだった桜彩はしかし、にこりと笑うとフィナンシェをもぐもぐと味わっている。
「美味しい!じゃなくて蓮詞!どうしたの?びっくりするじゃん」
「ああ、悪い。抹茶味のフィナンシェが俺のお気に入りでな。どうしても早く桜彩に食べてほしかったんだ」
「あ、そうだったんだ!美味しいよ!抹茶味も!」
「それはよかった。さて、そろそろ勉強に戻るぞ」
「はーい」と桜彩はまた教科書とノートに目を落とす。



