お悩み解決部が活動をはじめてから二週間。
設置したお悩み相談BOXへ毎日のようにお悩み相談メモが入るようになった。
進学先に悩んでいるから相談に乗ってほしいとか、勉強でわからないところがあるから教えてほしいとか、好きなひとに声をかけられるように勇気がほしいとか。
ときたま先生からも荷物運びを手伝ってほしい、物置きの片付けを手伝ってほしいなんて依頼もあったりして、毎日誰かしらの相談事を解決していた。
そんなある日の放課後。
『今週末、バスケ部の試合があるのに欠員が出て困っています』
そんなお悩み相談メモが入っていた。
「だって!相談者は二年一組、高橋くん」
私がそう相談メモを読み上げる。
「あら、私のクラスの高橋くんですね。バスケ部の副部長をされていたかと思います」
「部活の試合の助っ人か……。男子バスケ部だな」
「それなら五月くんか蓮詞がお手伝いできそうかな?」
私の言葉に、蓮詞が眉間にしわを寄せる。
「桜彩、本気で言ってるのか?」
「あはは、だよね」
苦笑する私に、蓮詞はふんと鼻を鳴らす。
「何故、藤村くんではだめなのですか?」
椿妃ちゃんが純粋な瞳で、素直な疑問をぶつけてくる。
「蓮詞は運動音痴なんだよ。運動がからっきしなの」
私の説明に蓮詞は少しむっとしながらも、渋々と言った様子で答える。
「俺は運動が苦手なんだ。とてもじゃないが運動部の助っ人なんてできない。足を引っ張るだけになるだろうからな」
「そういうこと!蓮詞は記憶とか頭脳関係ではすごいんだけど運動はだめなんだ」
そうなると、この依頼をこなせるのはひとりしかいない。
「五月くん、……」
そういえば話しに入ってこない五月くんを見ると、五月くんにしてはめずらしくなにか思いつめたような表情をしていた。
「五月くん?どうかした?」
私が声をかけると、五月くんははっとしたように顔を上げる。
「あ、え?ごめん、なんだっけ?」
「バスケ部の試合の助っ人だよ。五月くん、できそう?」
「え……」
五月くんは高速移動の能力もあるおかげか、足もすごく早くて運動神経もすっごくいい。
バスケ部の子たちも、五月くんが助っ人にきてくれたらすごく喜ぶと思うんだけど……。
けれど何故だか五月くんはなにかを迷っているみたいだった。
「五月くん?」
「あ、悪い。えっと、バスケ部の助っ人だよな?蓮詞がだめなら仕方ないな!俺が行くよ」
「…………?」
いつも明るく元気な五月くんから感じる違和感に、私は少し胸がざわついた。
さっそく体育館へとやってくると、ちょうどバスケ部が練習をしているところだった。
「高橋くん!」
その中の一人に、椿妃ちゃんが声をかける。
名前を呼ばれてこちらに気が付いた高橋くんは、少し驚いたような顔をしながら私たちのもとへ駆けてきた。
「北條さん?どうして……あ、もしかして、お悩み解決部のみなさんですか?」
「そうです!」
私たちは大きくうなずく。
「欠員が出て困っているという相談をくれただろう?」
蓮詞がひらりと相談メモを見せる。
「あ、はい!そうです!じゃあ、もしかしてあなたが助っ人を?」
「いや、俺じゃなくて、こいつだ」
何故か一歩後ろのほうに立っていた五月くんが、ゆっくりと前に出る。
「えっと……、よろしく!」
「ああ!転入生の!旭日くんだっけ?よろしくお願いします!」
高橋くんの固かった表情がほっとしたようにゆるんで、笑顔になる。
「相談メモにも書いたんだけど、週末に試合があるのに怪我で一人出られなくなっちゃったんだ。先輩たちが引退して、一年生と二年生だけになっちゃったんだけど、二学年合わせて七人しかいなくて。うち二人はほとんど幽霊部員だし。で、一人が出られなくなって五人に満たなくなってしまったんだ」
「なるほどな。まぁ、俺が来たからには問題ないぜ!これでも俺、もともとバスケやってたし!」
「え、そうなの?」
高橋くんと同じように私まで驚いてしまう。
「小さい頃に少しだけな!地域のクラブチームみたいなのに入ってたんだよ」
五月くんは眉を下げながら、なんとなく気まずそうにそう話した。
「バスケ経験者ならすごく助かるよ!週末の試合まで四日しかないけど、よろしくお願いします!」
「おう!がんばろーな!」
高橋くんとなにか話しながら、明るい笑顔を浮かべる五月くん。
私はその五月くんの笑顔を見つめていた。
「桜彩?どうかしたのか?」
蓮詞に声をかけられて、私はぱっとそちらに振り向いた。
「えっ!ううん!なにもないよ」
「そうか。またなにか未来でも見えたのかと思ったよ」
「あ、ううん、そうじゃないんだけど……」
なんだか気になるんだ、五月くんの様子が。
ぱっと見はいつもの明るくて元気な五月くんのはずなんだけど、バスケのことを話すとき、なにか少し苦しそうな、悲しそうな表情が一瞬見える気がしたんだ。
五月くんとバスケって、なにかあるのかな……?



